復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

もう一度「広田カキ」を…棚の作製に着手

[ 2012年2月23日 06:00 ]

<復興へのプレーボール>カキ養殖用のいかだを作る漁協関係者とボランティア

 千葉兄妹が暮らすのは、陸前高田市米崎町。自宅は高台で津波の被害は免れたが、同町は広田湾に面する漁業が盛んな場所だ。広田湾はカキの養殖で知られ、1974年(昭49)から東京・築地魚市場への出荷を開始。現在では「広田カキ」のブランドで知られ、全国一の高値を誇る。

 しかし、3月11日の大津波でカキ棚は全壊。一昨年2月に発生したチリ津波でもカキ棚は被害を受け、ようやく復旧した直後の出来事だった。

 「広田のカキは2年物で、粒が大きく味が濃いのが自慢。やっと全国に提供する準備ができたのに、またこれで苦労が水の泡だと思ったよ」

 広田湾漁業協同組合米崎支所の佐々木洋一さん(58)は、肩を落とす。佐々木さんの自宅は海から約500メートル。地震の際は沿岸で仕事中だった。「絶対に津波がくるから、船を沖に移動させなくちゃって海に出たんだよ。間一髪で助かったんだ」。船を沖に移動させ、すぐさま丘へ避難。そこで自宅の屋根までをのみ込む大津波を目の当たりにした。息子夫婦と2世帯の仮設住宅を申し込んだが、当選は1戸のみ。そのため、佐々木さんはプレハブ小屋を購入して生活している。

 それでも再び歩み始めることを決意。昨年5月から海中のがれき撤去作業を始め、現在は新たなカキ棚の作製に着手する。10メートル×4メートルの長方形のイカダを2台一組として、海に設置する作業も始まった。ただ、材料の丸太など資材確保が難しく、地元の森林組合の協力を得て150台75組のイカダをやっとの思いで完成。イカダの組み立ては、陸前高田災害ボランティアセンターから派遣される、全国からのボランティアの人々の尽力が大きい。

 「やっぱり海に船が戻っただけで気分が違うよ。寒いけど頑張らないとね」と佐々木さん。まずは今年10月の出荷を目指し、海へ向かう。

 

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