復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

東北人魂呼び戻してくれた

[ 2011年6月13日 06:00 ]

 自分だって苦しいはずなのに、もっとつらいだろう人たちに気を使う。「家が流された人のことを考えれば屋根が壊れたことぐらい」「亡くなった人のことを思えば家が流されたぐらい」「まだ行方不明者も多い。DNA鑑定で判明しただけでもありがたい」。東北人らしい優しさなのだろう。

 がれきの町にはいたるところに自衛隊や警察など全国からの救援、支援部隊に向け感謝の横断幕が掲げられている。中には報道陣の空腹の心配をしてくれる人もいる。

 3月11日、底冷えのグラウンドで夜が明けるのを待った高田高校ナインは、ある選手のカバンに入っていたガムを小さくちぎって分け、飢えをしのいでいたという。

 私は仙台から東京に出て12年目になる。電車に乗ればわれ先に椅子に座ろうとし、昼時のマックに行けばメニューをゆっくり選んでいる親子連れにイラ立つ時も。人の悪口を言うことも聞くことも平気になりつつある日常生活。自分だったらどうしただろう。1人隠れてガムを口にしたかもしれない。

 忘れかけていた東北人の心と魂。被災地で戦う大勢の人たちが呼び戻してくれたような気がする。 (写真部・高橋 雄二)

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