復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

高田“被災校対決”に敗戦も…次こそ恩返しの勝利を

[ 2011年9月11日 06:00 ]

<高田・大槌>4回1死、大久保の打球をダイビングキャッチする高田・佐藤隼

 秋季岩手県大会沿岸南地区予選の第1代表決定戦が10日、住田球場で行われ、高田高校は3―5で大槌に敗れ、敗者復活戦に回ることになった。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた高校同士の対戦となった一戦は、高田の先発・川原拓磨投手(2年)が3回4失点で降板。打線も序盤の失点を挽回することができなかった。高田高校は震災からちょうど半年に当たる11日の大船渡東戦に勝てば、23日開幕の岩手県大会の出場権を得る。

 思わぬ敗戦に足取りは重かった。3―5。沿岸南地区の第1代表を逃した佐藤央祐主将(2年)らナインは、力なく試合後の整列に向かった。

 「負ける気はなかったです。投手陣がこんなに打たれたのは初めてですし、打線がこんなに打てないのも初めて」

 序盤で主導権を握られた。初回。先発の川原が味方の失策を皮切りに2点を失うと、3回にも2点を許し、この回限りで降板。「自分の投球が全然できませんでした。エースとして情けないです」。打線も1点ずつ小刻みに返すものの、9安打全てが単打では序盤の失点をカバーするまでには至らなかった。

 震災のハンデは払しょくしたつもりだった。今もグラウンドには仮設住宅がびっしりと建っているため、新チーム発足後も遠征に出ざるを得ない日が続く。しかし夏休みには招待を受け、青森と岡山に遠征。八戸工大一や倉敷商など甲子園出場経験のある強豪と対戦を重ねたことで自信を深めた。「もう震災は言い訳にできないし、口にするやつもいない」と佐藤主将。来春のセンバツにつながる県大会に、堂々と第1代表で出場することを狙っていた。

 だが、まだチャンスは残されている。11日の大船渡東戦に勝てば、県大会への出場権を得る。佐藤主将は「自分が下を向いたらチームが下を向く。チームの顔として前向きにいきます」と心を切り替えた。

 高田高校には大きな目標がある。8月の岡山遠征の帰路、関係者の尽力で夏の甲子園大会をアルプス席から観戦。その礼状にナインはこうしたためた。

 「今回は招待していただきありがとうございました。今度は自分たちが甲子園のアルプススタンドに皆さんを招待します」

 支援してくれた人々には勝つことで恩を返す。そのためには地区予選で負けるわけにはいかない。11日は震災からちょうど半年に当たる。その節目の日に高田は県大会出場という明るいニュースを届ける。

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