復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

「希望の灯り」…神戸から届いた絆の証

[ 2012年1月20日 06:00 ]

「希望の灯り」を見つめる「気仙大工左官伝承館」の案内人、武蔵裕子さん

 陸前高田市の高台に「希望の灯(あか)り」はある。高い技術を持つ大工集団「気仙大工」の伝統技法を伝える「気仙大工左官伝承館」。三陸海岸を一望するその施設内に、被災地を見守るように力強くともり続けている。

 「希望の灯り」とは東日本大震災からさかのぼること16年前の95年1月17日に起きた阪神大震災からの復興を願い、神戸市の東遊園地内に設置されたもの。神戸のボランティア団体が、支援物資を陸前高田市に運んだことをきっかけに同館に分灯されることになり、昨年12月にガス灯が建立された。今後は被災者の精神的なよりどころとなることが期待されている。

 同館の武蔵裕子案内人は「今回の震災で失ったものは多いですけど、阪神大震災を経験された皆さんと関わることができるのはありがたいこと」と被災地同士の絆を強調。17日に神戸で行われた追悼イベントにも参加した。昨年の震災当日も勤務していた武蔵さんは、津波が町に押し寄せる様子を高台から目の当たりにした。「広田湾の海底が見えました。ここは私たちの自慢の景色だったのですが…」。震災から10カ月が経過しても、あの光景を忘れることはできない。

 二度と同じ惨劇を繰り返さないために。武蔵さんは津波に襲われた際に気をつけることを3つ伝えたいという。「海を背にして上に逃げる」「出口の近くに車を止めておく」「自分の命は自分で守る」。特に「自分の命は…」については「冷酷に聞こえるかもしれないけど、子供や親を捜しに行って亡くなった方も多い。生きていればどこかで会えるから」と涙ながらに話した。

 気仙大工の匠(たくみ)の技を後世に伝えながら、武蔵さんは震災の語り部の役目も自らに課している。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る