BC茨城に異色新監督!元NHKディレクターの伊藤悠一氏 野球指導経験なしも選手と新たな夢追う

[ 2023年1月13日 05:10 ]

就任会見で意気込みを語った伊藤悠一新監督(撮影・村井 樹)
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 異色の経歴を持つ新監督が、球界に新たな風を吹かせる。ルートインBCリーグの茨城は12日、元NHKのディレクターだった伊藤悠一監督(35)が1日付で就任したと発表。茨城県笠間市の球団事務所で会見に臨んだ新指揮官は、前代未聞の転職に「これまでの監督像を打ち破りたい。誰も手本にせずやってみたい」と胸を高鳴らせた。

 これまでと正反対の立場になった。ディレクター時代はほとんど着ることのなかったスーツ姿で登壇し、取材を受けた。テレビっ子だった幼い頃に抱いた夢はテレビ制作。高校中退や1年の浪人生活を経験しながらも、慶大卒業後にNHKに就職した。「プロフェッショナル仕事の流儀」など、多くの番組作りに関わり夢をかなえたが、一方で「小3から高校まで野球をやっており、いつかは指導者もやりたいという思いは常にあった」という。

 そんな時に目にしたのが、BC茨城の新監督募集だった。妻と娘のことを考え悩んだが「テレビ番組も人生も先が分からない方が面白い」と応募を決意。女性を含む99人の応募者から選ばれ、野球指導歴のないプロ野球監督が誕生した。

 チームは3年連続で育成選手ながらドラフト指名選手を輩出。伊藤監督は「独立リーグも夢を追える場。世間からそう思われるようになれば」と何度も強調した。「夢は思い続ければきっとかなう」と信じて歩んできた元ディレクターが、今度は夢を追う選手を導いていく。(村井 樹)

 ◇伊藤 悠一(いとう・ゆういち)1987年(昭62)8月10日生まれ、静岡県沼津市出身の35歳。日大三島を中退し、御殿場南を卒業後、慶大へ進学。小3から高校までは野球部だったが、慶大では競走部に入部し、4年時に十種競技でインカレ出場。12年から昨年末まで、NHKのディレクターとして「プロフェッショナル仕事の流儀」や「NHKスペシャル」を制作した。

 ≪色川GM「番組制作と似ている」まとめ役期待≫昨年、初めて地区優勝を果たしたチームを託すのは野球指導歴もない、元NHKディレクター。色川冬馬GM(33)は異例の人事を「厳しい環境で戦うわれわれと、制限がある中で番組制作をしているディレクターは似ている」と説明した。

 新監督への応募者には、プロや社会人でのプレー経験者もいた。ただ、各ポジションごとに専門コーチがいることもあり、同GMは「監督には首脳陣のまとめ役的なこともやってもらいたいという考えがある」と指導経験は重視せず。番組作りを仕切ってきた元ディレクターに、専門職や素材を一つにまとめる番組制作のように、チームを一つに束ねる存在として期待する。

 勝利だけではなく、選手を次のステージであるNPBなどへ送り出すことも独立リーグの存在価値。「野球界で生き続けてきた人でないからこそ気付くこともあると思う。プロ野球の底辺から新たな化学反応を起こしてほしい」とした。

 ▽茨城アストロプラネッツ 17年7月に設立され、19年からBCリーグ参入。22年に南地区で初優勝し、信濃とのリーグチャンピオンシップでは敗れた。20年に小沼健太投手がロッテに育成ドラフト2位指名され、昨秋に渡辺明貴投手がDeNAに育成ドラフト4位で指名されるなど、外国人選手を含めて6人がNPB入りし、22年には松田康甫投手がドジャースとマイナー契約を結んだ。運営会社はひたちなか市に所在。球団名はつくば市にある筑波宇宙センターなどから。元ソフトバンクの巽真悟が投手兼任コーチを務める。

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2023年1月13日のニュース