日大豊山・村岡暖 「最後の夏」…高校球児が神宮で球審デビュー「ドラマをこの目で…」

[ 2022年7月8日 05:30 ]

最後の夏に球審デビューすることが決まった村岡(撮影・柳内 遼平)
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 第104回全国高校野球選手権(8月6日から14日間、甲子園)の地方大会は、7日、各地で計23試合が行われた。8日開幕の埼玉を皮切りに、首都圏でも続々とスタートする。10日に初戦を迎える東東京大会では、審判員として「最後の夏」の集大成に臨む野球部員がいる。今夏に神宮で球審デビューを果たす予定の日大豊山・村岡暖内野手(3年)の、ここまでの道のりに迫った。

 球審。全てを見渡せる場所にいる唯一の存在。村岡の今夏の「主戦場」だ。7日に変則ルールで行われた紅白戦では帽子を後ろ向きにかぶり、審判用プロテクターとマスクをつけて「プレー!」を宣告した。見せ場は終盤、1死三塁でのスクイズ。間一髪早かった捕手のタッチを両目で捉えると「ヒー・イズ・アウト!」と会心のコール。大舞台でのジャッジへ準備は万全だ。

 17歳の高校球児が東東京大会で球審デビューを果たす。舞台は神宮に内定。都内で唯一とされる現役高校生審判員は任された大役に「ミスしてしまったら…めっちゃ怖い…」と本音を漏らしつつ、「最後まで分からないドラマをこの目で見てみたい」とも言った。

 一塁手の村岡は1年冬に右肩を脱臼し全治2カ月の重傷を負った。選手で大成する目標は遠のき、退部も考えた。そんな時に紅白戦の審判を務め「選手と違った目線で試合を見ることができた」と魅力に気づいた。

 昨春には福島直也監督へ、本格的に審判の道を志すと直訴した。高野連が主導する研修会や練習試合でベテラン審判員の熱血指導を受け、昨夏の東東京大会で公式戦デビュー。塁審で経験を積んだ。「高校野球を最後までやり切りたい」と現在も選手と同じ練習メニューで体力づくりに励み、妨害やボークなどの知識を選手に託して貢献している。

 小遣いをためて購入した審判用のマスクとプロテクターが相棒。福島監督は「これからの人生のスタートにしてほしい」と活躍を願う。村岡は今後の夢を「プロ野球審判員になる」と言い切る。普通の高校球児とは違う形で白球を追い、いざ「プレーボール」を迎える。(柳内 遼平)

 ◇村岡 暖(むらおか・だん)2004年(平16)12月24日生まれ、埼玉県蕨市出身の17歳。蕨市立南小2年から南町サザンクロスで野球を始め、日大豊山中では軟式野球部に所属。日大豊山では2年夏から東東京大会などで審判員を務める。憧れの人は元NPB審判員の佐々木昌信氏。1メートル77、74キロ。右投げ右打ち。

 ≪1試合報酬 4000円程度≫Q 東京都高野連の審判員になるための条件は?
 A 高校生以上、30歳未満の年齢制限があり、所属または卒業した高校の野球部長の推薦書が必要です。他県などで経験を積んだ審判員の場合は、30歳以上でも一定の条件をクリアすれば登録が認められるケースもあります。女性もOKで、20年夏の東東京大会では佐藤加奈さんが都高野連初の女性審判員としてデビューしました。
 Q 球審デビューまでの期間は?
 A 高校野球では最初に二塁、三塁塁審から始め、一塁→球審の順に経験することが一般的です。村岡審判員は2年夏、同年秋、3年春の大会を経て、4大会目で球審デビューします。NPBでは1年目の審判員でも2軍戦においては最初から球審を担当します。
 Q 高校野球審判員の報酬は?
 A 1試合4000円程度が一般的です。主に交通費やお弁当代に充てるケースが多いそうです。
 Q 甲子園の審判員は誰が担当するの?
 A 近畿在住の審判委員と、全国から派遣される審判員が担当します。

 ≪サッカーでは17年宮城総体で高校生が審判員≫サッカーでは審判の最下級にあたる4級ライセンスを保持すれば、高校総体、選手権などの地方予選で主審を務めることができる。4級は各都道府県協会が実施する講習会を受講すれば取得可能で、18歳以下で4級以上のライセンスを持つ人は21年度で約7万1600人。全国総体では17年の宮城総体で初めて高校生が審判員を務めたケースもあり、23日開幕の四国総体でも高校生審判員を募集して選考を進めている。

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