槙原寛己氏 大谷、リアル二刀流の難しさと良さと ゲームの中での見事な修正は大きな収穫

[ 2021年4月27日 12:18 ]

ア・リーグ   エンゼルス9―4レンジャーズ ( 2021年4月26日    アーリントン )

初回、先制のホームを踏みベンチでナインとハイタッチする大谷
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 【槙原寛己 視点】リアル二刀流の難しさと良さ。両者が如実に表れた。初回裏の投球には、今日はどうなるのかと不安にさせられた。表の攻撃で二塁から長駆先制の生還。普通の投手なら、ダイヤモンドを全力で駆けてから先発マウンドに上がることはなかなかない。その弊害が出た。

 2週続けて対戦のレンジャーズ打線。前回抜群だったスプリットは当然頭にある。そこも考え、初回はスプリットをほとんど投げず、スライダーと直球で組み立てた。だが、スライダーは曲がりが悪く、腕が下がって顔や体から離れ気味に投げていた。これが直球にもリンクし、抜けるシュート回転が続いた。良い時はもっと上から投げ下ろす角度があった。

 ターニングポイントは2回の打席だろう。ゲームの行方をまた分からなくさせる2点二塁打。レベルが違いすぎて恐縮だが、私も経験がある。先発投手はヒットを打つと乗ってくる。気持ちも楽に、前向きになったはずだ。2回裏の投球からはほぼ完璧だった。
 ここまで見事に修正できたのは、精神面に加えて、ゲームの中で「この日の自分の球」を見つけられたから。右打者への「インスラ」、左打者には「バックドア」となるコースへのスライダー。ボールゾーンからストライクへ、曲がり幅の計算もできていた。逆のコースへの、右には外角低め、左には膝元へのスライダーは今一つだったが、この球が鍵になった。4回の2つの見逃し三振はいずれもこの球。スプリットは元々問題ない。真っすぐも指にかかればある程度どのコースでもファウルを奪える。このことを覚えれば、投球がもっと楽になってくる。

 まめの影響もあり降板したのか、まだまだ投げられそうだった。私自身はまめはほとんどできたことなく悩まなかった。体質もあると聞く。今後もローテーションで回ってほしいのはやまやまだが、今は打撃も状態がいい。登板間隔をうまく空けながら、マドン監督ならば上手にやりくりできるのではないか。

 これだけ投打に加えて走れば、誰でも疲れる。終盤の表情にものぞいた。それだけ他の誰にもできない凄いことをやっていることは間違いない。何よりもゲームの中で、これだけしっかり投球を修正できたことは大きな収穫になった。(スポニチ本紙評論家)

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