阪神被災球児が行進先導「被災地に元気が届いていたらうれしい」

[ 2011年8月6日 11:00 ]

第93回全国高校野球選手権大会の開会式で、入場行進の先導役を務める兵庫高野球部の山下将司主将

第93回全国高校野球選手権大会開会式

(8月6日 甲子園)
 夏の甲子園開幕式で行進の先導役を務めたのは、1歳で阪神大震災を経験した兵庫県立兵庫高野球部の山下将司主将(17)だ。「いま被災地にいる小さな子どもたちが、自分のように笑って野球ができる日が来ると信じている」。願いを胸に、力強くグラウンドを踏み締めた。

 一番幼い頃の記憶は小学2年、グラブを手に校庭へ駆けだしたこと。全壊した自宅や、ひび割れた近所の公園は覚えていない。小中の9年間、毎日野球ばかりして過ごした。遠くにボールを投げられるようになったと喜び、バットの芯で球をとらえた時の爽快感に夢中になった。

 高校1年の1月17日早朝、練習の疲れを引きずりながら、追悼セレモニー後の東遊園地(神戸市)に父(52)と出掛けた。広場のろうそくはまだともっていて、犠牲者の名前を刻んだ慰霊碑には薄い日が差していた。

 「こんなにも多くの人が亡くなった地震の後で、自分は野球をやらせてもらえたのか」と胸が締め付けられた。あの日、寝ている自分に覆いかぶさり守ってくれた母(50)。父は危険を顧みず立ち上がってたんすを押さえたという。生きて野球ができることへの感謝はずっと胸に残っている。

 震災の記憶がない自分が先導役を担うことに戸惑いもあった。しかし、神戸を代表する気持ちで、支援してくれた多くの人へ「ありがとう」の思いを胸に、歩いた。終了後は「緊張せず自然体で行進できた。被災地に元気が届いていたらうれしい」と充実した表情で振り返った。

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2011年8月6日のニュース