聖光学院・歳内、万全出陣「点を取られないように…」

[ 2011年8月6日 06:00 ]

納得の投球を披露した聖光学院のエース歳内

 第93回全国高校野球選手権大会(甲子園)が6日に開幕する。東日本大震災で深刻な被害を受けた福島県から出場する聖光学院のエースで、プロ注目右腕の歳内宏明投手(3年)は5日、6日第3試合の日南学園(宮崎)戦に備え、兵庫県西宮市内で約2時間最終調整した。仕上がりに自信をのぞかせた歳内。聖地の視線を一身に集め、新たな剛腕伝説が幕を開ける。

【日程】

 小気味のいいキャッチャーミットの乾いた音がブルペンに響き渡る。大阪入りしてから初めてのブルペン投球。歳内は、日南学園の1~9番全員を想定して、左、右の打席に実際に打者を立たせての59球。ついに臨戦態勢が整った。

 「全部の球種の感覚が良かった。ヒットは打たれても点数を取られないよう粘り強く投げたい」

 万全の状態で初戦に臨む。太鼓判を押すのは今年2月末に同校に就任したトレーナーの大高茂氏(38=鍼灸=しんきゅう=師)。かつては母校の堀越(東京)でトレーナーを務め、高校生だった楽天・岩隈の体のケアを担当。プロゴルファー・片山晋呉や俳優・渡辺謙の専属トレーナーも務めるゴッドハンドの持ち主は、歳内が最も信頼を寄せる人物の一人。就任直後から「左足に体重を乗せてリリースポイントを10~20センチ前にする」というフォームの習得を全面サポートしてきた。

 福島大会の準決勝(いわき光洋戦)では左広背筋の肉離れというアクシデントに見舞われた。大会中に自己最速145キロを更新することはできなかったが、歳内は「準決勝でやっと理想のフォームが分かった」。ハリ治療で肉離れを完治させた大高氏も「正しい体重移動ができているからこそ左広背筋に負担が出た。悪いことではなく状態が上向いている証拠。甲子園で148キロぐらい出てもおかしくない」と話す。

 東日本大震災と原発事故で苦しむ福島県の代表として乗り込む甲子園。1歳で阪神大震災も経験した右腕は「自分の行動で(被災地への)思いが伝われば」。言葉に出さないが、優勝旗を持ち帰ることが何より県民を勇気づけることは十分すぎるほど理解している。「(8強入りした)1年前よりマークがきついけど、やるべきことをやれば結果はついてくる」。日本中が注目する「みちのくNo・1右腕」の特別な夏がいよいよ始まる。

 ▼聖光学院・斎藤智也監督 日南学園はパワーのあるプルヒッターが多いが、歳内の力の方が相手打線を上回ると思う。8、9割の力を出せば、間違いなく抑えてくれるでしょう。

 ◆歳内 宏明(さいうち・ひろあき)1993年(平5)7月19日、兵庫県尼崎市生まれの18歳。小園小―小園中。楽天・田中や巨人・坂本らを輩出した宝塚ボーイズに中学1年から所属。同3年には主将。昨夏の甲子園からエース。球種はスプリット、カーブ、スライダー、シンカー、チェンジアップ。憧れの投手は西武・涌井。家族は両親、妹、弟。1メートル82、82キロ。右投げ右打ち。

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2011年8月6日のニュース