G1周年記念競走展望

【平和島G1トーキョー・ベイ・カップ】地元勢、復活期す

[ 2014年5月12日 05:30 ]

水面相性No・1の浜野谷
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 ボートレース平和島のG1「開設60周年記念トーキョー・ベイ・カップ」はあす13日、開幕する。年末の大一番、SGグランプリ(賞金王決定戦)の舞台となる当地に、歴代ウイナーをはじめ各地区の精鋭が集結。迎え撃つ東京支部は復活を懸ける浜野谷憲吾(40)、中野次郎(32)らが第60代のメモリアルチャンプを目指し、熱戦を繰り広げる。

 地元G1を控えて中野がポツリとつぶやいた。「変わるか、変わらないか。今年の僕にとってここが凄い重要なんでしょうね」当大会は08年(第54回)、11年(第57回)と2度の優勝実績。今年のグランプリの舞台は14年ぶりの平和島となるが「今の僕の能力では狙えない」としつつ、縁のある大会で浮上のきっかけをつかみたいところだ。

 デビュー当初から非凡なセンスを見せ、06年に24歳で新鋭王座決定戦(からつ)を制覇。年末のグランプリシリーズ(賞金王シリーズ)でSG初優出(4着)を果たした。抜群のルックスと相まってニックネームは「二代目東都のエース」。誰しも浜野谷に次ぐ関東の新看板として期待した。

 だが12年の新プロペラ制度施行後、A2級陥落を経験するなど低迷。これまで以上にエンジン抽選に左右される状況下で優勝回数は激減した。施行前の好調時はある程度納得のレベルに仕上がり「あとはいかにレースに集中するという状態になっていたが、この制度になってからイケてない」と壁にぶち当たった。

 「(今大会に出場する)中田竜太とか土屋智則に勝てる気しないし、毒島(誠)はもう絶対無理です」自虐的なコメントを並べるのも分からなくもないが、まだ32歳。老け込む年齢じゃないことは本人が一番自覚している。最近はプロペラのピッチ(ねじれ)を従来と逆の方向で調整するなど試行錯誤の日々だ。

 優勝した1月の多摩川でわずかながら手応えをつかみ、3月のとこなめG1、浜名湖G2と6号艇ながら準優まで駒を進めた。復活を期す地元G1について「まだ全然だめですが、準優に乗ってできれば優出したいですね」。これまでもフライング禍で成績を落としてははい上がった。もがいて、もがいて。輝きを取り戻す日が来ることを信じて。

◇浜野谷、水面相性No.1

 2日目ドリーム戦に1号艇で登場する浜野谷憲吾は、通算66Vのうち13Vがここ平和島。4月2日に終了した一般戦でも優勝したばかりだ。それも井口佳典、湯川浩司ら強敵ぞろいのシリーズで飾ったもの。当地での記念制覇は07年のSGボートレースクラシックを最後に途絶えているが、やはり水面相性No・1は浜野谷で間違いない。

 現行エンジンを、すでに3回経験していることも心強い。「良くないエンジンを引いてしまったら駄目。素性は分かっているので良いのを引きたいね」。あくまで抽選運が鍵を握ると語ったが、当地ではエンジン実績以上の結果を出してくる。実際に、昨年12月の一般戦では2連対率28%の平凡機でV。今年2月のG1関東地区選でも、2連対率35%の中堅機で準優3着と奮闘した。好調機を引き当てれば、優勝争いは確実だ。

 今年は14年ぶりにグランプリが開催される平和島。東京支部のエースである以上、絶対にベスト18には残らなくてはならない。「年末に向けて勝てるところで勝っておきたい」。51周年記念以来2回目の当地G1制覇を足掛かりに、賞金レースで上位に躍り出る構えだ。

◇熊谷、もっと良いレースして結果を

 地元勢最年長の熊谷直樹はデビューこそ多摩川だったが、G1初VとSG初Vは共に平和島。当地周年記念も、G1初制覇となった41周年の他に44周年を制している。ただ、最近の成績には不満顔だ。「このペラ制度になってから以前ほどエンジンを出せていない。優出はしているが優勝を狙える位置ではなかった」と、舟足を仕上げられずにいる。

 しかし、いつまでも地元水面で苦戦を続けている訳にはいかない。「最近は1着を並べるような成績がないので、もっと良いレースをしたい。平和島では特に、その気持ちが強い。ましてや記念に出るということは、施行側に呼ばれたということ。それなりの結果を出さないといけない」。魂のレーサー・熊谷が感謝の気持ちを持って走る今大会。必ずやダイナミックな走りで盛り上げてくれるはずだ。

◇魚谷、イメージ抜群の水面で恩返し

 6号艇・浜野谷の前付けを阻止しインを死守。深い進入になりながらもコンマ08のトップスタートで押し切り55周年覇者に輝いた魚谷智之が主力の一角を担う。「平和島は外からでもダッシュ伸びするイメージがあって好きですよ。それとエンジン差があるからいいのを引いた時は絶好のチャンスにもなるしね」。08年1月の尼崎近松賞以来となる1年3カ月ぶりのG1Vを果たした平和島は魚谷にとってイメージ抜群の水面なのだ。

 それだけではない。「嫁がBP河辺で働いていたこともあり、お世話になった方が多い。恩返しのつもりで走ります」。より一層、気持ちを込めた走りを約束してくれた。

 新ペラ制度で苦しんだ時期もあったが「最近ようやくつかめてきた」と、リズムも上昇。得意水面で完全復活を狙う魚谷から目が離せない。

◇湯川、1カ月半前のリベンジに挑む

 当地53周年記念の覇者である湯川浩司にとって、今回はリベンジに挑むシリーズとなる。約1年ぶりの平和島参戦となった3月28日~4月2日の一般戦。前検から力強い動きを披露し、初日ドリーム戦では浜野谷のイン戦を撃破した。勢いそのままに予選をオール連対でトップ通過。湯川Vの雰囲気が漂い始めた。しかし、準優でまさかのスタート遅れ。優出を逃してしまったのだ。

 今大会は1カ月半前の雪辱戦。ペラ制度が変わってからは当地で目立った成績を残せずにいるが「活躍したこともあるし良い思い出があるレース場」と、水面には好印象を持っている。

 大村周年で準優進出、直前の住之江GW開催で優出3着と近況のリズムもまずまず。都内3場すべてでG1優勝経験を持つ湯川。名誉挽回だけでなく、今年初Vを狙ってくるはずだ。

◇中島、関東の場でもたくさん記念を

 名だたる歴代覇者の中でも、中島孝平(34=福井)は記憶に残るウイナーだ。SGグランプリ(賞金王決定戦)を制した翌10年の第56回大会。大雪の影響で遅参し2日目から参戦したが、オール連対で予選1位通過。準優1枠、優勝戦1枠と王道を進み見事優勝した。

 地元を襲った大雪のため前検日前日に乗車した特急が立ち往生。車内で一夜を明かし、おにぎりなどの支援物資でしのいだ。翌日も滋賀県彦根市までしか行けず、平和島にたどり着いたのは初日午前。「よく言われますが、やっている方は大変でしたよ。次は遅れないようにします」と苦笑いで振り返った。

 昨年のグランプリ(住之江)は準優勝。年末の当地グランプリで奪回する腹づもりだが「まだ意識はしていませんが、関東の場でもたくさん記念を獲りたいと思っています」と闘志を燃やした。

◇石渡、近況足踏み状態

 当地の前回G1、関東地区選手権ウイナーの石渡。得意水面の江戸川以外で念願のG1タイトル初戴冠となった。近況は3月のボートレースクラシック(尼崎)を含めSG、記念競走4節でわずか4勝と足踏み状態。「ホッとしちゃったのか、勢いに乗り切れなかった」スタート一発の攻撃力はSG戦線でも引けを取らない。「賞金的にも大きいし、優勝を目指したい」と当地G1連覇へ意欲。6月の江戸川周年記念と地元G1が続くタイミングで、もう一段階ギアを上げる。

◇今村、“吉兆”の3号艇DR再び波乱演出!?

 平和島でSG、G1それぞれ1Vを挙げている今村豊は、当地通算勝率も7・93で出場メンバー中トップ。多くのレース場で結果を残してきただけに「平和島には良いイメージも悪いイメージもないかな」と笑ったが、抜群の水面相性を誇っていることは紛れもない事実だ。特に今村が強さを発揮するのは当地のドリーム戦。08年笹川賞では6号艇で、11年の57周年記念では3号艇で共に白星を飾り、波乱を演出した。今回は2日目ドリームに3号艇で登場。再び驚きの走りを見せてくれるかもしれない。

◇平和島のコース別入賞率

 13年に当地で争われた全レースのコース別1着率は、1コース=24・3% 2コース=20・3% 3コース=17・5% 4コース=18・3% 5コース=12・9% 6コース=8・3%だった。しかし、近況は2~6コースがいずれも約2~5ポイントのマイナス。1コースの1着率は楽々と40%を超えている状況だ。「差し」が幅を利かせるレース傾向は変わらないものの「4カド」から攻め切るシーンは少ない。したがって、6コースから2着以上に絡むのはかなり厳しい。

◇最近の動きも良いのは23、46、26、53、47号の5機

 現行エンジンは昨年6月に導入。使用開始から11カ月が経過し、上下差はハッキリしている。2連対率40%以上で最近の動きも良いのは23、46、26、53、47号の5機。20号と69号も好調だが、共に2節前の転覆の影響が気になる。19号と14号は2連対率こそ40%に満たないが、近況の気配は目を引く。対照的に、56号と73号は数字ほどのパワーを感じられない。中堅レベルの機力もあるか疑問だ。21位以下では13号と15号に注目。13号は地区選V機で、A1級が乗った時はトップクラスの動きを見せる。15号は最近の動きが抜群に良い。

◇初日ドリーム戦展望

 6枠の山口剛は記念でも前付け敢行のケースが目立つ。しかし、深い進入では踏ん張れる可能性の低い当地だけに無理せず枠なりの6コースから展開を見極めるスタイルに徹するかもしれない。いずれにしても、中心は松井繁。たとえイン受難の当地でも、白い勝負服での登場なら信頼度は絶大。もちろん、インからの速攻劇で決着だ。強敵はセンターから強まくりで襲いかかる中島孝平。来期適用勝率で全国トップの山口剛も上位に食い込んでくるはず。斉藤仁は冷静に差して浮上。

◇2日目ドリーム戦展望

 細かく説明するまでもなく、1枠の浜野谷憲吾が勝たなければいけないレース。近況のリズムとか、エンジンの仕上がりとか、そんなことを論じている場合ではない。とにかくインから逃げ切って地元ファンに存在をアピールするのが使命だ。浜野谷を脅かす対抗格は4カドに持ち込めそうな毒島誠。現状の勢いなら「関東のエース」として君臨できるレベルにまで成長している。2枠の太田和美にも抜群の安定感があり上位争いを演じる可能性は高い。さばき安定の吉川元浩に要注意。

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