G1周年記念競走展望

【G1びわこ大賞】近江を制する者は天下を制する

[ 2014年3月3日 05:30 ]

びわこで好成績を収めている君島
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 豊臣秀吉が草履取りから出世して一国一城の主となったのが近江の地。そこから天下人になったことは周知の通り。“近江を制する者は天下を制する”。ボートレースの世界でもしかりだ。滋賀県の6分の1を占める日本一の琵琶湖を戦いの場にするボートレースびわこは風向きがコロコロと変わり、うねりもよく発生する難解な水面。近年、そのびわこの記念レースを制する者が賞金王に輝く傾向にある。3月4日から始まる(9日優勝戦)開設61周年記念「びわこ大賞」は今年のグランプリ(賞金王)ロードでカギとなる者が出現しそうだ。

 日本一の難水面ともいわれるボートレースびわこ。その骨の折れるところを克服した者こそ、真の強者となりえる。湖面で絶対的な強さを誇る松井繁は艇界の王者として君臨。そして、近年、びわこの記念を制した山崎智也、池田浩二は、その後、賞金王となった。そういう意味ではデビュー前から練習している地元・京滋軍団のレーサーも強くなるべき存在なのだろう。

 今回、地元から参戦する精鋭の中から君島秀三に熱視線を送る。今年に入って記念ロードをまっしぐら。まだ結果は出ていないが、勝負になる腕はある。ちょっとした流れひとつで成績がガラリと一変する可能性を秘める男だ。

 何といっても決戦の地となるびわこで最近、好成績を収めている点が強調材料になる。前走の正月シリーズこそ、準優でコンマ05の非常識なFによって即刻帰郷させられたが、「あれは勝負に行ってのものです」とやむを得ず。前々節の昨年11月スポニチ杯八景賞では優勝。3節前の昨年9月戦でも優勝を決めている。2012年にも地元連覇を記録。びわこで2年連続で連覇劇を演じることは、なかなかできない芸当だ。

 「びわこで連覇といっても一般戦ですからね…」 

 本人は謙虚に受け止めるが、昨年11月のスポニチ杯八景賞では、巧腕の記念ウイナー・倉谷和信、名うてのスタート巧者・室田泰史ら近畿地区の実力者相手に優勝を決めたのだから十分価値のあるものといえる。

 「自分では新鋭リーグに出ていたころが、最も調子が良かったと思います(笑い)。その後は展開も見えない時期もありました。それが、最近は少しずつ、見えてくるようになってきました」

 もともと湖国・期待の星としてデビュー。一時期は3期連続でA2級に落ちてしまうというスランプもあった。苦い経験をしたからこそ、またA1級に戻ってこれたのだろう。今回のびわこ大賞は2009年以来と久しぶりの出場。成績が安定してきてからでは、いわば“初めての地元記念”参戦となる。

 「記念では予選突破がままならない状況です。だから、なんとか準優出を決めたいですね。1度、予選をクリアできれば、その後はすんなりといけそうな感じがするんですよ」

 今、まさにワンランク上のステージに駆け上がろうとしている。勝手を知る水面で課題のG1予選突破が克服できれば、自分の今の殻を破れると信じる。

 「子どもも生まれたし、父が強いところも見せたいですね。とにかく、いまはG1で結果を出すことが目標です。SGに出たいという話はG1戦で格好がついてからですね」 
2000年大会の山田豊以来、びわこ大賞では地元選手が優勝していない。近江の地は近江人が守るか。13大会ぶりの快挙を狙う。甘いマスクと強心臓の持ち主の君島なら真のヒーローにピッタリだ。

◇平石、1戦集中

 艇界最高峰レースである2014年のSGグランプリ(賞金王決定戦)は首都・東京のボートレース平和島で14年ぶりに開催される。このことをだれよりもグッドニュースだと思ったのは平石和男だろう。平和島でSG、G1を奪取して水面実績は群を抜く。今年からルールが変更されて賞金王決定戦の出場枠は18人となった。ベスト18入りへ、平和島と同じ難水面のびわこで賞金を稼ぐ構えだ。

 昨年は平和島周年でG1優勝、SGまるがめMB記念では準Vと活躍し、惜しくも年末の大一番のベスト12入り目前にまで迫った。来年にはマスターズ(名人戦)世代の仲間入りをするベテランになってきたが、ますます走りには磨きがかかる。

 「昨年はたまにいい時もあったけど、コンスタントに稼げなかった。そのわりにはいい位置にいることができたし、ポジティブに考えたいね」

 前向きな性格が進化させるのだろう。風ぼうもそうだが、老け込むような様子は一切ない。

 「次の東京オリンピック(2020年)まではやるつもりだよ(笑い)。これからは大嶋(一也)さんみたいに自分からコースを取っていく姿勢も見せていきたいね」

 ヤル気はコース取りにまで表れる。1月のからつG1周年記念では大外枠の時には前付けに動いた。そのどん欲さが成績に結びつき今年初めてのG1戦で、いきなり優出(?着)を決める。

 「課題はもう少しエンジン出しを安定させたいね」 パワーが普通レベルあれば、あとは持ち前のハンドルワークで戦える男だけに調整力強化に努める。

 びわこは平和島同様、インが弱くてダッシュ向きの水面。平石にとっては“仮想・平和島”になるのか。

 「びわこは平和島のようにダッシュがよく利くね。ただ、びわこはインで残せやすいけど、平和島では飛んでいくイメージ。とにかく、びわこは乗りづらいところだけど、ストイックになってがんばります。応援ヨロシク!」

 “ロードto平和島”。今回、約4年ぶりのびわこ参戦になるが、決戦の地に続く大事なシリーズに変わりはない。いつも通り、目の前の1戦に集中していく。

◇先行予想

 昨年12月の当地記念レース・G2秩父宮妃記念杯で好モーター12号のパワーをいかんなく発揮して“王道モード”で優勝した松井繁が中心だ。言うまでもないが、びわこはドル箱水面。当競走では2年連続で準Vと惜敗が続くだけに、今回は2004年以来、3度目のVあるのみだ。

 松井を苦しめるとすれば初日、2日目のメーン競走に位置付けられているドリーム戦に参戦する面々か。中でも、新鋭の前田将太が対抗格1番手になる。昨年の当競走では優勝戦1号艇に入った。結果としては【5】着となって初のG1タイトルはお預けとなったが、その後の昨年12月G2秩父宮妃杯でも優出(【2】着)と、よほどびわこ記念レースとの相性は良さそうだ。

 2012年のG2秩父宮妃記念杯を制した後に賞金王に輝いた山崎智也、当競走V2の実績を残す今垣光太郎、2009年当競走覇者の新田雄史、地元の雄・守田俊介らもV圏内になるか。からつG1周年記念を制して近況絶好調の田村隆信は、びわこで目立った成績を残していない。勢いの違いを見せたいところ。

 湖面で活躍する“巧者”の石川真二、荒井輝年、須藤博倫、安達裕樹らも侮れない存在。そして、守田以外の地元・京滋軍団の精鋭たちも忘れてはならない。記念戦線で好勝負が可能な川北浩貴、近況リズムは良くないが、地元で気迫の走りが期待できる昭男&喜継の吉川ブラザース、スピードスター・馬場貴也、びわこで2年連続の連覇劇を演じる君島秀三らも意地の走りを披露するか。

◇中道義博、名腕が斬る

 ファンのみなさま、ご機嫌いかがでしょうか。いよいよ、びわこボートの61周年記念が始まります。私は当競走で3回優勝(1985年度、89年度、94年度)しています。たいてい、この結果を見た人に、びわこの水面は好きだったんでしょうね?と聞かれますが、実はそうでもないんです。

 びわこは好きや嫌いというよりも、成績がいいか、悪いかのどっちかでした。とにかく風はコロコロ変わるし、うねりは出るし、本当に難しい水面でしたね。それだけに、優勝した時の気分は格別でした。

 やはり、全国で最もスタートがしにくいところだったと思います。私は標識などの目標物を決めてスタート勘を合わせていました。みなさんもご存じでしょうが、びわこのピットはホーム側にあって全国でもめずらしいところです。6コースから見る景色も違うし、他場と比べてスタンドとの間があるというのもあってこれという目標物がなかったので合わせづらかったです…。F3になったのもびわこでした。あれは自分が厄年の時でしたが、意味のないFを切って休んでいるようではダメだと思い知らされたのを覚えています。あの出来事があったからこそ、その後に12年ぶりに笹川賞(1992年)を勝つことができ、続けてグラチャンも勝ってSGを連覇することができたと思います。だから、びわこは思い出深いところと言えますね。

 そうそう、びわこの思い出といえばモーターです。私が走っていたころ、モーター番号ではなく、滋賀や京都の近場の有名な地名がそれぞれに付けられていた時期がありました。特に雄琴号と祇園号が脳裏に焼き付いています。その名前のように、華やかで“ビンビン!”に強そうなイメージ通りの出方をしていましたね(笑い)。今大会もスタートとエンジンがポイントになってくるでしょう。びわこは1号艇以外の枠番でも勝てるレース場です。いいエンジンを引いて、いいスタートを決めていければ、楽しみは広がります。(本紙評論家)

◇V最短の道は良いモーター

 選手持ちペラ制度が廃止されてからモーターパワーの良し悪しが如実に結果に出る傾向にある。ボートレースびわこでも、そうだ。いかに成績のいいモーターを得るか。これがV最短の道になろう。勝率、2連対率でトップ3に入るモーターがオススメ。勝率、2連対率でトップの13号、12号、17号がそれ。特に近況は12号の活躍が光る。昨年12月のG2秩父宮妃記念杯で優勝した松井繁が駆ったものだ。今年に入って正月戦で中村有裕が優出し、その後の荒法師賞では転覆して足落ちが心配されたが2月のびわこ幸舟福運Cで篠崎元志が優出して問題はない様子。全体的にバランスよく仕上がってコース不問の仕様だ。

◇3代目ビナちゃん

 最近のゆるキャラブームに乗り遅れまいと、ボートレースびわこのマスコットキャラクター・ビナちゃんが昨年12月4日、G2秩父宮妃記念杯初日にリニューアルされ、公表された。劇画チックに琵琶湖ナマズをデフォルメした先代よりも可愛くなって3代目を襲名。同時に女の子のキャラクターであるビーナスちゃんも誕生した。びわこボートの顔として様々なシーンに登場する予定だ。

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