矢沢永吉 人生を変えた8・28 44年の時を超え 後楽園から国立へ

[ 2022年8月29日 05:00 ]

矢沢永吉 デビュー50周年記念公演

ライブでパフォーマンスする矢沢永吉(C)HIRO KIMURA
Photo By 提供写真

 矢沢永吉が国立競技場のような野外スタジアムで初めてライブを行ったのは、1978年8月28日の東京・後楽園球場。くしくも44年前の同じ日だ。

 矢沢は本紙の取材に「僕の人生で最も大きなターニングポイントとなった一つがこの後楽園ライブだった」と明かしている。同年は矢沢のシングル曲「時間よ止まれ」がNo・1ヒットし、自伝本「成りあがり」は100万部を超える大ベストセラー。高額納税者番付の芸能部門で1位になり「BIGになる」という夢を達成した象徴が当時、最大収容人数を誇った後楽園球場だった。

 だが、ライブを終えた矢沢は「まるで砂漠の中に、ひとりポツンといるようだった」と物凄い寂寥(せきりょう)感に襲われたという。目標を見失った矢沢は、山中湖の自宅を失う悲劇も重なり苦悩のどん底に落ちるが、そこで次なる目標を探しに渡米する。これを転機に、自分でレコードからコンサートまで制作してスタジオ経営もする、全て自力で活動できる“万能アーティスト”へ変貌を遂げるのだ。

 今回の国立から解禁された「タオル投げ」についても78年の後楽園ライブは縁がある。最初に始まったのは86年のツアーで新曲「止まらないHa~Ha」が歌われた場面。興奮した一人の観客が「永ちゃ~ん」と叫びながらタオルを上に放り投げたのが最初。それが3年間かけて客席に浸透し、89年には会場全体で“タオルの花”が咲いた。実はそのタオルを矢沢が肩に掛けるようになったのが78年。真夏のステージの暑さは40度を超え、汗を拭くたびにスタッフからもらうのが面倒になったのが理由。矢沢が肩にタオルを掛けなければここまでファンに浸透しなかったわけで、このように矢沢の物語は時を超えてつながっていることが多い。ちなみに、この日の終演時に観客の送り出しに使われた曲は「海にかかる橋」。後楽園ライブの時に流れた曲「ひき潮」をほうふつさせた。

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2022年8月29日のニュース