トヨタ自動車・河合完治が左肩脱臼から7カ月ぶり公式戦復帰「腐らずにやるのが僕の野球人生」

[ 2022年11月5日 10:00 ]

第47回社会人野球日本選手権大会2回戦   トヨタ自動車2―0パナソニック ( 2022年11月4日    京セラドーム大阪 )

<パナソニック・トヨタ自動車> 9回1死、トヨタ自動車の代打・河合は中飛に倒れる (撮影・後藤 大輝)
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 急がず、焦らず、一歩一歩を踏みしめるように打席へと向かった。9回1死走者なし。トヨタ自動車・河合完治は代打として、7カ月ぶりとなる公式戦復帰を果たした。

 「まさか、公式戦に復帰できるようになるとは思ってもいなかった。支えてくださった皆さんのおかげ。感謝の気持ちでいっぱいですし、技術的な以外の部分でもチームに貢献できる選手でありたいと思います」

 入社して9年目となる今春。選手生命を脅かされる、大ケガに見舞われた。4月5日のJABA静岡大会、JR東日本東北戦。6回、二盗を試みた際の交錯プレーで左肩を脱臼した。4月16日に手術を受け、そこから1カ月間は左肩を固定。グラウンドから遠ざかる日々が続いたが、「野球少年に戻れたというか。もう一度、野球がしたい」と心は折れなかった。懸命なリハビリを経て、9月中旬に本隊へ合流。自分との戦いに、今回も負けなかった。

 「一番楽な選択はあきらめることでしたが、良くないときも全てを受け入れて、腐らずにやるのが僕の野球人生。後輩たちも見ているし、彼らにどんな姿を見せることができるかということは意識してやってきました」

 強靱な精神力で、何度も、何度でも、降りかかる試練を乗り越えてきた。19年の都市対抗・三菱自動車岡崎戦では、二塁守備で打球に飛び込んだ際に右肩を脱臼。負傷から半年が経過して初めて投じた送球は、5メートルの地点にも届かなかった。2球目を投げることなくグラウンドを引き揚げたが、気持ちを奮い立たせ翌日にはリハビリを再開。翌20年7月29日、同じ三菱自動車岡崎戦で実戦復帰を果たせた瞬間の感謝と感動は、今も忘れない。同年12月には右肘を手術。その都度、絶望の淵から戻って来られるのは、確固たる理由があるからだ。

 「トヨタで日本一を経験させてもらった。あの最高の景色を忘れることができない。若い選手に経験してもらうためにも、もう一度、優勝したいんです」

 16年都市対抗は二塁のレギュラーとして優勝。17年の日本選手権では、決勝の日本生命戦で決勝打を放った。中京大中京3年夏には全国制覇。勝ちきることの難しさを誰よりも知るからこそ、その分、その素晴らしさを誰よりも知る。

 この日の打席は中堅後方への中飛に終わったが、その結果以上に、グラウンドへ戻ってきた姿が何よりも尊い。「ずっとリハビリしてきた姿を、みんなが見ている。これからの試合も大事なところでいってもらいます」。藤原航平監督は河合の存在そのものに、大きな期待を寄せる。過酷な戦いが待ち受ける大会終盤戦。4大会ぶり6度目となるVを狙うトヨタ自動車に、大きな戦力が加わった。

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