イチロー氏が高校野球女子選抜に語った “ドツボにハマらない”不調時の対処法とは

[ 2022年11月5日 08:00 ]

高校女子選抜と記念撮影をするイチロー氏(左)と松坂氏ら両チームの選手たち
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 マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏が率いる草野球チーム「KOBE CHIBEN」と「高校野球女子選抜」の試合が3日、東京ドームで行われた。松坂大輔氏(本紙評論家)が初参加し、昨年の対戦でも完投したイチロー氏は1失点で完投勝利を挙げ、大いに盛り上がった。

 イチロー氏の試合後のヒーローインタビューは印象的だったが、実は1万6272人の大勢のファンが退場した後も熱弁をふるった。三塁ベンチ前に「高校野球女子選抜」のメンバーを集め、約1時間に渡り、丁寧に質問に答えた。

 「プレッシャーに打ち勝つためにはどうすればいいですか?」、「苦手な投手と対戦する時はどう準備しますか?」、「調子が悪い時はどう対応しますか?」。さまざまな質問への回答の中で、特にこの「不調時の対処法」が興味深かったので紹介したい。イチロー氏は次のように語った。

 「今、みんなが打席が終わるとiPadを見ているよね。何を探しているのか知らないですけど、もしかしたら良かった時の自分に近づけるようにしているのんじゃないでしょうか。それをするとドツボにハマります」

 データ分析が重要視される現代野球。特にメジャーでは試合中にベンチ内でタブレットを使用して、すぐに自分の打席を映像で振り返ることができ、自身の打球やスイングのデータや、相手投手の投球データも即時に確認できる。イチロー氏はその全てを否定しているわけではないが、ある種の違和感を覚えているようだった。

 「最高の(状態の)自分を追いかけるのは、今の自分からすると“距離”がありすぎる。ギャップがありすぎるから、有効(な手段)ではない。みんな、最高の自分を見ている。僕に言わせれば、そんなのは見ちゃダメですよ。(現役時代は)僕も5打数5安打ではなくて、3打数1安打、4打数1安打を続けている自分を見ていた。そうすると、割と早く(不調から)抜けやすくなります」
 日米通算4367安打の天才打者には、地道に、実直に、時に遠回りをしながら、結果を残してきた自負があるのだ。

 質疑応答の最中、イチロー氏は実感を込め、何度も「高校野球女子選抜」のメンバーたちに語りかけていたことも印象的だった。「高校野球っていいよね。皆さんには今を大事にしてほしいです」。10月に49歳になったが、その表情は野球少年そのものだった。

 現役引退から3年半が過ぎた今もマリナーズの球団会長付特別補佐兼インストラクターとして選手とともに体を動かす。日々、最高峰のプレーを目の当たりにする中で、感じて、考えて、表現する日本の高校野球の面白さや醍醐味を再認識しているのかもしれない。(記者コラム・柳原 直之)

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2022年11月5日のニュース