羽生結弦 表現力高い演技はスケート界の道しるべ 技術点だけでなく演技構成点も高水準

[ 2022年7月22日 04:30 ]

羽生結弦
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 【緊急連載 羽生結弦のレガシー(3)】羽生ほど、見る者を魅了するスケーターはいない。それは表現力を5項目で採点する演技構成点にも表れている。15年GPファイナルSPでは「バラード第1番」で「演技の表現力」で10点満点を出した。21年全日本選手権のSP「序奏とロンド・カプリチオーソ」では、非公認記録ながら「音楽の解釈」で満点。技術点だけでなく演技構成点でも、キャリアを通じて高水準を保ってきた。

 連覇した平昌五輪などで使用したSP「バラード第1番」、フリー「SEIMEI」は伝説的プログラム。平昌から2年後の20年2月の四大陸選手権では、ルール改正後に初めて再編集した2曲で優勝した。SPでは自身が持つ世界記録を更新。羽生は「ワインとかチーズみたいなもの。滑れば滑るほど、時間をかければかけるほど熟成され、深みが出る」と形容した。

 北京五輪でも舞ったフリー「天と地と」序盤には「風が舞い上がるような感じの音」に合わせ、あえて両手を上げた2回転トーループを跳ぶなど、ジャンプも表現の一つとして捉えた。

 多くの視点から知見を得ることで、技術だけでなく表現も研磨されていく。同門で最大のライバルだった盟友のハビエル・フェルナンデスさん(31)は力説したことがある。「フィギュアスケートはジャンプを中心としたロボットのような技術だけでなく、いろいろな要素が多く含まれる素晴らしい競技」。

 年齢とともに表現の深みを増し続ける羽生や、表現力で勝負し続けるジェーソン・ブラウン(米国)らが正しい評価を受けなければならない。そのために、フェルナンデスさんは「今日のフィギュアスケートの採点方法を少し変えていくべき」とも訴えていた。

 羽生はプロ転向の会見で「僕が好きなフィギュアスケートは、僕が憧れた時代のスケート」と語った。高難度ジャンプだけではなく「もっともっと心から何かを感じられるような演技」という。

 くしくも、国際スケート連盟は今季から5項目の演技構成点から「要素のつなぎ」と「音楽の解釈」を「プレゼンテーション」として組み込み、3項目に再編。時代とともに、フィギュアスケートは変化していく。それでも、羽生が残した競技会での演技は、スケート界にとっての道しるべになる。

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2022年7月22日のニュース