信頼失わぬようドーピング問題の真相究明を

[ 2022年2月19日 05:30 ]

女子フリー、演技を終え涙するワリエワ(中央)。左がエテリ・トゥトベリゼ・コーチ(撮影・小海途 良幹)
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 【藤山健二 五輪愛】女子シングルで銅メダルを獲得した坂本の演技は素晴らしかった。4回転ジャンプやトリプルアクセルがなくてもこれだけの得点が出せることを証明してくれた坂本には、心から拍手を送りたい。

 対照的に、渦中のワリエワはミスを連発して4位に沈んだ。坂本は「見ているのがつらかった」と言った。テレビを見た多くの人が同じように感じたに違いない。こうなることは十分予測できたはずなのに、「出場を阻止すれば彼女に回復不能な損害を与える」として異例の出場を認めたスポーツ仲裁裁判所の判断はやはり間違っていた。誤った判断によって15歳の少女を世間のさらしものにし、取り返しのつかないダメージを負わせた責任は大きい。

 キスアンドクライで泣きじゃくる彼女の姿は痛々しかった。しかし、だからといって彼女の涙を美化し、この事件をうやむやのまま終わらせては絶対にいけない。なぜ禁止薬物が体内から検出されたのか、それが本人の意思だったのか、周囲が無理やり、あるいは事実を偽ってこっそり飲ませたのか。なぜ12月に採取した検体の検査結果が2カ月たった今頃になって判明したのか。一緒にリンクに上がった他の選手たちはもちろん、あの悲しい演技を目撃せざるをえなかった私たちには、真実を知る権利があるはずだ。

 ロシアの国内選手権で行われた検査である以上、調査や処分の権限はロシア反ドーピング機関にある。だが、同機関はこれまでにも数々の不正や隠蔽(いんぺい)に加担してきた過去があり、本気で真実を追及する気があるのかどうか極めて疑わしい。

 そうであるのなら、IOCや世界反ドーピング機関は強権を発動してでも必ず真相を究明し、禁止薬物の使用にかかわった関係者を厳しく処分しなくてはならない。それができなければ、五輪はドーピング違反の選手を出場させた偽りの大会として、永遠に信頼を失うだろう。(特別編集委員)

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