【高校ラグビー開幕直前連載】息づくフェアプレー精神 尾道は献血バス呼び社会貢献

[ 2020年12月25日 07:00 ]

花園今昔物語(4)フェアプレー精神

献血に協力した尾道ラグビー部(尾道高提供)
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 第100回全国高校ラグビー大会が27日に花園ラグビー場(大阪府東大阪市)で開幕する。連載最終回は「フェアプレー精神」。尾道(広島)は今春、コロナ禍による輸血の血液不足を受け、献血バスを呼んで協力する行動を起こした。

 尾道の流儀はシンプルだ。困っている人がいれば手をさしのべる。今春、新型コロナウイルスの感染拡大で、全国的に献血協力者が減った。部のOBから輸血の血液が不足している状況を聞いたフランカー森元一気主将(3年)は動いた。

 「学校は休校で、ラグビーの大会もなくなった。今何ができるのか。リーダー陣で話し合って、献血って僕らでできないかなって」

 どうせなら、一度にたくさんで輸血した方が効率がいい。バスを呼んで、地域の協力も得られないだろうか。マネジャーの原田浩並(3年)がポスターを製作。商店街に配った。多くの人を呼ぶなら、場所は学校近くのスーパー「ハローズ向島店」の駐車場が広くてピッタリだ。お願いに行った。5月27日。年齢制限を満たした16歳以上ですり傷のない部員約30人と、地域住民を合わせて100人超の血が集まった。

 高校生だけで実行するには高いハードルで、首脳陣や教師が絶えず進む道を照らしていたのは確かだ。だが、発案は生徒。田中春助監督(32)は「行動しないと変わらない。それを選んでくれたことがうれしかった」と教え子を称えた。

 3年生は18年の西日本豪雨でも、ポリタンクの水を高齢者宅に運ぶボランティアをした。もっとさかのぼれば、チームは11年東日本大震災も復旧を手伝った。

 「試合後は敵味方関係なく称え合うのがラグビー。仲間が突っ込んで困っていれば、助けるのもラグビー。フェアプレー精神とボランティア活動はつながっていると思う」

 森元主将の言葉に迷いはない。27日に学法福島(福島)と当たるチームは、FWとバックスが一体になったアタッキングラグビーが持ち味。戦術まで魅力的だ。過去最高14年度の4強超えを狙う。

 昨年W杯では、台風の被害に遭った地域を、日本代表やカナダ代表が泥かきをした。困っている人のために一肌脱ぐのは、国籍、年齢を問わず、ラガーマンの共通認識のようだ。時代とともに道具や戦術が変わっても、フェアプレー精神だけは、次の100回もきっと変わらない。(倉世古 洋平)

※花園出場の全63校選手名鑑は、スポーツニッポン大阪版12月26日紙面で掲載予定(開幕前日のメンバー変更は反映されません)。遠隔地の方もヤフーショッピングで購入できます。

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