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小さなファイター大きな興奮 15センチ未満オイカワと大格闘 埼玉・入間川

[ 2021年5月9日 06:11 ]

フライでオイカワとの駆け引きを楽しんだ筆者
Photo By スポニチ

 【奥山文弥の釣遊録】若き友人・斎藤竜也さんと一緒にオイカワ釣りに行ってきました。場所は埼玉県の入間川。そこは斎藤さんの近所で、我が家からもたったの9キロという近さでした。これなら多摩川の下流へ行くより近いです。

 オイカワの釣り方はドライフライが面白いという方が圧倒的に多い。なぜなら水面に浮いているフライにピシャッと飛沫(ひまつ)を上げ、食いつく瞬間が見えるからです。ただしフッキング率はそれほど良くありません。オイカワはたくさんいますから、次々に出てきますが、掛かりません。吐き出すのが早いからではありません、口が小さいため、フライが口の中に入らないのです。小さなフライを使ったとしてもティペット(ハリス)が付いているため、吸い込もうとしても口の中に入りにくいのです。特にドラグという水の流れでティペットが引っ張られると、それ以上の力で吸い込まないとフライは口の中に入らないのです。この理由を勘違いしている方がいるのでご注意を。

 そこで私たちは細いハリスを使います。用意した道具はロッドがアルトモア「X842―3LL」、リールは同「100S」、ラインはWF2フィート。リーダーは7X9フィートにサンライン「トルネード鮎」の0・2号。斎藤さんはオリジナルロッドになんと100年前のクラシックリール。ラインはWF1フィート、ティペットは0・3号でした。

 最初はドライフライの#18サイズで釣っていたのですが、風が強くなってきたのでウエットフライに変えました。ウエットフライも同等のサイズです。

 釣り方はダウンストリームスイング。フライを対岸からやや斜め下流に投げて、川の流れにラインを引かせて、川の中を扇状に横切らせるようにします。

 こうすることにより川の中のどこかにいる魚が、泳ぐフライを見つけ、食いついてくるのです。私が1990年代に釣りで通っていたカナダのスティールヘッド(巨大な降海型ニジマス)と全く同じ方法です。

 斎藤さんと交代で釣っていると、相手が掛けても「おおっ」と盛り上がります。たかが15センチもない魚を釣っていてこれだけ興奮するのも、この釣り方ならではだと思います。これはまさしく究極のオイカワ釣りです。

 オイカワをフライで釣るためには特殊なものは何も必要ありません。フライは小さければなんでも食いつきます。しかしながらこの釣りの楽しみ方の一つに道具を選ぶということが挙げられます。

 淡水の小物釣りは、こだわりのもの、美術品、芸術品とも呼ぶべき絶品が多いです。ワカサギ、タナゴ、ヘラブナなど釣りそのものの性能よりも、美しさ、所持している満足感を高めるものが多くあります。オイカワフライもその傾向にあります。たまにやるから面白いと思っている程度の私も、友人が持っているハンドメード作品を見ると欲しくなります。リールなどは斎藤さんが使っていたようなウン万円もするクラシックなビンテージ物に走る人もいます。

 そうやってこの釣りの価値観を上げて自己満足する方がいる半面、前述のように釣り具はなんでもOKなので、とりあえず釣ってみることをお薦めします。これからの時季は婚姻色も出て色鮮やかになります。この小さなファイターは全て自然繁殖ですから野生魚のたくましさに驚きつつ釣りをしましょう。(東京海洋大学客員教授)

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