×

昨秋“アジ”をしめて 先輩“タチ”に助けられ…

[ 2018年9月18日 14:20 ]

まあまあサイズに笑顔の佐々木さん
Photo By スポニチ

 【根ほり葉ほり おじゃま虫ま〜す】河岸払い前の船内はさまざまな表情であふれている。タチウオ狙いでにぎわう川崎・中山丸にも淡々、期待、不安が並んでいる。その中で一番浮き浮きしている中年男性の横におじゃま虫ました。(スポニチAPC 町田 孟)

 ひときわ高い声だった。「もう病みつきです!」。佐々木勇さん(44=世田谷区)はキャリア1年に満たないのに釣りの魅力に取りつかれてしまった。きっかけは昨年10月のことだ。取引先の知人にアジに連れていかれた。釣果はあった。が、まだ魚すらも下ろせない。「近くのスーパーに持ち込み何とか頼み込んでさばいてもらった」。とどめは「おいしかったのなんの」。以来タチ、マルイカ、マダイなどにもターゲットを広げた。今では月に5回のローテーションを組むまでに。もちろん調理の腕も上がった。「全部僕がやります」。

 一美夫人(44)との間に子供が3人。長男はすでに独立して家を出て娘さん2人と4人暮らし。「長女も勤めていますし、次女は部活で忙しくて相手にしてくれない。週末が暇になっちゃって」。これまでは趣味らしいことは何一つしてこなかった。初めて新鮮な驚きに出合い、手に染めたのが釣りだった。

 土木建設の設計が仕事。「社員です」と言うが「社長兼任」。営業から経営まで、つまり個人で切り盛りしている。ハードに違いない。しかし「全く余分なストレスはないし精神的に楽ですね」。土木という観点から新たな発見もあった。「海から見る桟橋や護岸周辺の建造物が奇麗だなって」。現在、風車を手掛けている。風力発電に用いるあの大きなプロペラの塔で海上型。下関市の安岡沖2キロ水深20メートル地点に10基設置する“プロジェクトX”だ。「完成したら壮観、絶景ポイントになりますよ」。

 32歳の時に独立した。次女が小児喘息(ぜんそく)だったのが引き金になった。「そばにいてやる時間が欲しくて」。穏やかな口調にも人柄が表れている。「釣り人ってなんて優しいんだと感じてます。苦戦していれば嫌な顔もしないで教えてくれるし。仕事じゃ味わえません」。何もかもが楽しくてならない様子。病膏肓(やまいこうこう)に入る寸前だ。生涯初、唯一無二の“友”が隠し持っていた魔力から、もはや逃れられそうにない。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、川崎・中山丸=(電)044(233)2648。午前6時45分出船。料金9800円(餌、氷付き)。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る