クイーンの「366日の記憶」 研究家・石角隆行氏「奥が深い」

[ 2023年5月9日 08:45 ]

石角隆行氏の新刊「クイーン グレイテスト・デイズ 366日の記憶」
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 【牧 元一の孤人焦点】読み物として面白い。クイーン研究家・石角隆行氏(60)の新刊「クイーン グレイテスト・デイズ 366日の記憶」(シンコーミュージック・エンタテイメント)。世界的人気バンドの「今日は何の日?」たが、中には異様に文字数の多い日があり、新たなノンフィクションの味わいがある。

 例えば、4月17日。この日は1975年のクイーン初来日を取り上げているが、およそ2ページにわたって文章が続く。4人を招聘したのが芸能事務所「渡辺プロダクション」だったという話、渡辺晋会長と美佐夫人がその2年前に渡英した時の話、会長が朝礼で社員を前に「彼らを呼ぶ」と宣言した話などなど。日本の芸能史としても興味深いエピソードがつづられている。

 石角氏はこの本の出版に至った経緯についてこう話す。

 「かつて洋書でクイーン・ダイアリーは存在しました。でも、毎日の文字数が限られていて、同じ日に大事なことが複数あっても1日1件の記載しかありませんでした。毎日クイーンのコラムのようなものを読める本があれば良いと考えていたところ、出版社の編集者から私自身が書くことを勧められました」

 石角氏は2019年にクイーンの公式録音192曲を徹底解説した「クイーン全曲ガイド」、21年にはライブ映像・音源やメンバーのソロ活動などを網羅した「クイーン全曲ガイド2」を刊行し、両方とも重版になっている。

 「以前の2冊より今回の方が苦労しました。まず日にちの確認が大変でした。メンバー本人が自身のサイトに記載していることが間違っている場合もあります。だから、その日のその事柄が本当に事実なのかどうか、ひとつひとつ確認する必要がありました。そして、全く書くべきネタがないと思うような日もありました。当初は、ない日があっても仕方ないか…と考えていましたが、あるファンから『そういう本があったら私はまず自分の誕生日から読む』と言われて考えを改めました。確かに、自分の誕生日に何もなければ寂しいでしょう」

 例えば、4月30日。ネタ探しに苦労したが、彼らの数多くのコンサートを入念に調べていくうちに、1979年の3回目の日本ツアーの福岡公演で異変があったことを突き止めた。彼らはライブで「ボヘミアン・ラプソディ」を演奏する際、途中のオペラ・コーラスの部分は音源を流していたが、この日は、スタッフのミスで、ピアノの音だけが収録された音源が流れていた。その時の観客はレアな「ボヘミアン・ラプソディ」を耳にしていたわけだ。4月30日は石角氏自身の誕生日でもあった。

 「自分ではクイーンにある程度は精通しているつもりでしたが、調べれば、まだまだ新たな発見があります。クイーンは奥が深いです」

 既に4冊目への胎動は始まっているようだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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