太田光 映画撮影監督・前田米造さんしのぶ…初監督作品でカメラ担当「プロってすげえなって」

[ 2021年7月14日 19:14 ]

「爆笑問題」の太田光
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 お笑いコンビ「爆笑問題」太田光(56)が13日深夜、パーソナリティーを務めるTBSラジオ「爆笑問題カーボーイ」(火曜深夜1・00)に出演し、6日に誤嚥(ごえん)性肺炎のため死去した映画撮影監督の前田米造さん(享年85)との思い出を語った。

 太田は91年公開のオムニバス映画「バカヤロー!4 YOU!お前のことだよ」で、第1話の監督を担当。撮影部のチーフが、伊丹十三監督や森田芳光監督(ともに故人)の作品を多く手掛けていた前田さんだった。

 太田がメガホンをとるのはもちろん初めて。当時まだ20代で、お笑いの仕事も途切れたころだった。撮影スタッフから露骨に悪口を言われるなど、さすがの太田も精神的に参っていたという。そんな中でも、太田を監督として認めてくれていたのが、前田さんだった。「前田さんがいたから、俺はできたわけ。前田さんが、『監督ね…』って言ってくれるんだよ。わざとみんなの前で言ってくれるから、『前田さんが言うならしょうがないや』って」。前田さんの姿勢を見て、スタッフも動いてくれていたという。

 前田さんは限られたスタッフしか見られないカメラの映像も、太田に見せてくれたという。仕事のやりやすい環境を作ってくれた前田さんに、太田は「前田さんは必ずそうやって言ってくれた。それが本当にありがたかった」と感謝した。

 ある時のロケハンでは、あやしげな雰囲気の湖を探すことに。「あやしげな湖を探すんだけど、それもなくてさ。いくつも湖を回ったのね」。太田のこだわりに合う湖が見つからず、スタッフも途方に暮れる中、前田さんが遠くで「監督!」と太田を呼んだという。

 前田さんは指で四角いフレームを作り、太田に「ここからのぞいてみてよ」と一言。そこには、まさに太田が求めていた風景が広がっていたという。太田は「スワンボートや売店がある湖で、前田さんが作ってくれた指を中をのぞいてみたら、区切られた四角の中だけがまさに“あやしい湖”だった」と興奮気味に回想。「プロってすげえなってあの時、ホント思ったね」と話した。

 前田さんによると、予算のない作品を撮っていた若手時代に編み出した撮影法だったという。太田は「『フレームの中だけいい絵というのを、ずーっとやってきたんだ。俺、ただの貧乏性なんだよ』って言ったんだよ」と振り返った。知恵を使って映画を作り続けた苦労人の裏話を、太田は「『金はないけど、こうやって撮れば工夫してこういうふうにできるんだ』というのは、こういう人たちがたぶん、作ってきた。それが、前田米造なんです」と熱弁した。

 長年の下積みを経て、前田さんは映画界を代表する撮影監督に。太田は「その人がようやくメインを張るようになって、角川映画で『天と地と』を撮る。そりゃ何千っていうエキストラを使って、抜けのいい絵を撮った時のうれしさとか、そういうのを言ってたね」と、懐かしそうに思い返していた。

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2021年7月14日のニュース