広澤克実氏 ヤクルト・内山壮の一発の強さ見えた 第3戦オリックスに地の利、勝利必須

[ 2022年10月24日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2022第2戦   ヤクルト3―3オリックス ( 2022年10月23日    神宮 )

<ヤ・オ>9回、同点3ランを放った内山壮を手荒く出迎える村上(左から2人目)ら(撮影・尾崎 有希)
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 【広澤克実 日本シリーズ大分析】ヤクルトが先手を取って迎えた第2戦。オリックスに追い詰められたヤクルトだが、土壇場の9回に代打・内山壮が同点3ランを放ち、引き分けに持ち込んだ。本紙評論家の広澤克実氏(60)は、高卒2年目の捕手がボールになるスプリットを見極め、直球を狙い打ったと分析。その内山壮ら多様性に富んだキャラクターの多さが、短期決戦に強い高津ヤクルトの武器と評した。(構成・秋村 誠人)

 土壇場の9回に3点差を一発ではね返してしまう。それも高卒2年目の捕手、内山壮の一振りで。大事な場面で代打に起用した高津監督の采配も見事だと思うが、それ以上に、こんな選手が代打でしっかり結果を出す。ヤクルトの強さが見えた気がする。

 この回、途中出場の宮本の右中間二塁打と塩見の四球で無死一、二塁。代打に起用された内山壮は、2ストライクから2球続いたスプリットを見逃し、続く高めに来た141キロ直球を左翼席へ同点3ランにした。ここで目についたのが、スプリットを見逃したときも直球を本塁打したときも、同じステップだった点だ。捕手としてある程度の予測もあるだろうが、直球を狙いながらボールになるスプリットをしっかり見切っていた。この見極めが起死回生の一発を生んだ一因だった。

 加えて、抑えで出てきたオリックス・阿部はパワー系の中継ぎ陣とは違い、直球は140キロ台。緩急を使って内外角、高低などのコンビネーションで抑えるタイプだが、力で押す投手よりもヤクルト打線には合う。内山壮は阿部の緩急に完璧に対応して打った。

 こんな打撃ができる高卒2年目の選手がいるのが今のヤクルトの強さなのだろう。同点の口火を切った宮本は内外野を守れ、思い切りのいい打撃の長岡は遊撃の定位置を獲ったばかりだ。大黒柱の村上、不動の1番・塩見だけではない。それは厚い選手層という表現よりも、多様なキャラクターがそろっているという表現がぴったりくる。いろんなキャラクターがいて、それぞれが仕事をする。試合の終盤になって出てくる若い選手が、シリーズの大舞台で躍動。それがチーム力で、内山壮はキャラが立っている一人と言える。

 第1戦を落としたオリックスはいかに流れを変えるか。先発の山崎福が負の流れを変えて、試合の主導権を握った。山岡、田嶋、宮城も投げられる中での起用は高校、大学時代に神宮を多く経験していること。加えて打力を買ってだろう。

 私の母校・明大の後輩でもあるが、明大時代は善波達也監督が二刀流で使ったほどの打力を持っている。天才肌で抜群のセンスから、とにかくバットに当てるのがうまい。私が指導に行ったときも教えることがなく、イチローのようにボールゾーンの球もヒットにする技術があった。

 0―0の3回1死三塁の打席。初球の低めギリギリの132キロチェンジアップを右前へ運んだ。絶品のミート力を生かした一打と言っていい。投球でもチェンジアップをカウント球にも勝負球にも使い、4回無失点。ヤクルト打線はチェンジアップにタイミングが全く合わず、技巧派ぶりを存分に発揮した。

 5回からの継投もセ・リーグには少ない150キロを超えるパワーピッチャーの救援陣でつないで無失点。大胆なオーダー変更など、中嶋監督の勝負勘がさえたが、9回に抑えの阿部がヤクルト打線につかまったのは予想外だったかもしれない。

 オリックスは9回に追いつかれた以降、完全に負けパターンだった試合を引き分けたのは大きい。2敗となるところが1敗1分けで本拠地・京セラドームに戻る。過去のシリーズを見ても、ホームチームが強いのは顕著。DH制の第3~5戦はオリックスに地の利がある。ただ、重要なのは第3戦で、この日の引き分けを価値あるものにするためには勝利が必須となる。

 第2戦に山崎福を起用したことで、先発には山岡、田嶋、宮城が残る。一方で抑えの阿部が同点弾を浴び、第3戦以降の抑えがポイントだろう。注目したいのは延長12回に8番手で登板した近藤。直球は140キロ台後半ながら、8月末以来の登板で2三振を奪うなど3者凡退に抑えた。6番・中村以降の下位打線相手だったが、近藤の直球が村上、オスナにも通用するなら、このシリーズはより面白くなってくる。

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