阪神・岡田監督 第一次監督時代にいた理想的な1番打者・赤星 今チームで得点につなげる最適解とは?

[ 2022年10月22日 07:00 ]

05年、60盗塁で阪神のリーグ優勝に大きく貢献した赤星
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 【連載・岡田の考え<5>】ドラフト会議でも阪神は確実に補強ポイントを埋めた。強いチームのためにも、打順とポジションの固定が大切だと考える岡田彰布にとって、第一次監督時代には理想的な1番打者がいた。赤星憲広(本紙評論家)だ。優勝した05年は出塁率・392、190安打で60盗塁。巨人の前にV逸した08年も出塁率・398、176安打、41盗塁。安定した数字を残した。

 出塁した赤星に対して、ベンチの指示は「グリーンライト」。盗塁を含めた判断は赤星に任されていた。赤星との関係では「行けたら、行け」という次元ではなく「どんどん行け」に近い意味が込められていた。仮に盗塁を狙って失敗しても、それは赤星の責任ではない。岡田はそう位置づけていた。

 打撃にも投球にもスランプはあるが、足にスランプはない。そう言われることが多い。だが、何度も修羅場を経験した赤星は足にもいい状態と悪い状態があることを知っていた。どうしてもスピードに乗れないときもあれば、スタートに迷いが生じるときもあった。「うまくいかない」と感じながらプレーしていた時期に、岡田が動いたことがあった。

 塁上の赤星に、岡田が出したサインは「盗塁」だった。「マジか」と思った赤星だが、サインに込められた「思い切って走ればいいんや。大丈夫や」の意図は伝わった。迷っていることを監督も見抜いていたのだ。ここは全力で「盗塁」サインに応えるだけ。スタートを切った赤星の気持ちは吹っ切れていた。

 「1番が塁に出れば、得点につながるのは当たり前のこと」と全幅の信頼を寄せられていた。岡田ワードではこれも、しばしば「そらそうよ」と省略して表現される。「そらそうよ」が出るたびに、今回はどんな意味かと繰り返し尋ねたことも、赤星にとっては当時の思い出だ。

 今回の阪神には、赤星に並ぶ存在が2人いる。近本光司と中野拓夢。シーズン後半は1番・中野、3番・近本の形が続いた。安打、得点はほぼ互角。ただ、近本の41四球に対して、初球から打って出る中野は18四球。それが・352と・301という出塁率の差に表れている。2人の強みと弱み、そして最終的には出塁が得点につながるか。最適解を岡田は追求する。

 さらにフェニックス・リーグでは小幡竜平がサイクル安打でアピール。日本ハムとの交換トレードで獲得した渡辺諒も二塁の有力候補だ。「今回はベンチワークで点を取る。元々は好きじゃないけど、バントもいっぱいする」と得点力不足解消を目指す岡田は秋から競争をあおる。 =敬称略=(鈴木 光)

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2022年10月22日のニュース