ヤクルト黄金期バッテリー対談 高津監督「全力でぶつかる連続日本一」古田氏「信念の采配勉強になった」

[ 2022年2月19日 06:10 ]

色紙を手に笑顔を見せる高津監督(左)と古田氏(撮影・村上 大輔)
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 ヤクルト・高津臣吾監督(53)と、2年連続で春季キャンプの臨時コーチを務めた球団OBで元監督の古田敦也氏(56)が対談した。90年代の黄金期にバッテリーを組み、公私でも親交が深い2人。チームの成長、球団初の連続日本一に必要なことからプライベートまで、たっぷりと語り合った。(取材構成・青森 正宣)

 ――昨年は古田臨時コーチの指導も生かされ、日本一になった。

 古田氏(以下、古) 正直なことを言うと、まさか優勝するとは思っていなかった。上にいくチャンスは十分あるメンバーはそろっていると思ったけれど。

 高津監督(以下、高) はっはっは。正直だなあ。

 古 順位予想も5位。最下位は脱出するでしょう、うまくいったら3位くらいあるかなと言ったけれど。凄い。若い力、可能性は人にあるんだと改めて思い知らされた。勉強になりました。

 高 古田臨時コーチの力が、もちろん大きかった。バッテリーを中心に立て直しを考えていて、適任者は古田さんしかいないと。たくさんのことを伝えてくださり、バッテリーが成長して、いろんなことが改善されました。

 古 去年は投手、捕手を中心にミーティングも3回、3時間くらいやらせてもらって“現役のときはどんなことを考えていたか。生き残れる投手はこんな投手”という話をさせてもらった。

 高 イメージしていた以上の動き、指導をしていただいた。今年も古田さんの刺激、スパイスを注入してほしいと。気持ち良く、ぜひ参加しますと言っていただいた。凄くいい時間を過ごさせてもらいました。

 古 1年ぶりに指導させてもらって、選手の成長を凄く感じますね。優勝したら、普通はもうちょっと浮かれる。僕は優勝した次のキャンプは緩い感じでやって、野村監督によう怒られました(笑い)。今年の選手はもっと高みにいってやろうというのがある。

 ――現役時代から公私で仲がいい。お互いはどんな存在か。

 高 失礼になってしまうけれど先輩って感じではない。兄貴分。だから、しにくい話もできる。相談にも乗ってくれるし、親身に答えてくれる。近くにいる人では僕のことを一番、よく分かっている方。よき理解者。

 古 3歳違い。大学だったら1年と4年。だいぶ差があるはずだけれど…。

 高 はっはっは!確かに。大先輩。

 古 でも、僕もそう。古い言い方をすると戦友。同僚。困っていたら助けるし、近くにいなくても頑張れ、頑張れと思っている。

 高 このオフも“お祝いさせてくれ”と。基本的には人生楽しくタイプの方。お互い、20代で出会い50代になったけれど、昔から変わらないですね。

 古 プライベートでもオフは一緒に自主トレもしていたし、ゴルフもよくした。パターは10年くらい同じの使っているよね。

 高 これにはいろいろ理由があるから!確かに変わらないですね。はっはっは。

 古 例えば、ゴルフのクラブが進化したと言われれば、ちょっと使ってみたいと思うけれど、いいと思ったことは“なんで変えなきゃいけないの”と信念を持っている。去年の采配でも、最後の最後まで奥川を中6日で投げさせなかった。僕だったら絶対できない。“もういけるんちゃう”と。後半の大事な試合になったら頼むぞと。でも、彼の将来も含めて最後まで守った。やりくりは大変だったと思うけれど、凄い勉強になりましたね。

 高 キャンプ中の短い期間ですが僕もこの2年、同じ現場に立って、勝ちに対する貪欲さ、厳しさ、我慢強さは全く衰えていないと感じました。臨時コーチとして“そんな簡単に勝てない、そんな楽していたんではダメ”と指導している姿を見ると勝負師なんだと再認識しました。90年代とか“こんな感じだったな”と思い出しました。

 古 多かった食べ物の好き嫌いは少しなくなってきたよね。

 高 はっはっは。まあ、そういうことも知っている仲ですよね。

 古 食べたくないもんは食べなくていいでしょタイプ。トマトが嫌いだから、イタリアン行きたくないと。でもアメリカから帰ってきた頃から、いろいろなものが見えてきた。土地が変われば人が変わる。韓国、台湾、BCリーグでも生き抜いてきて、こっちがベターじゃないかといろんなアイデアを持っている。上に立つ人間はいろんな武器を持っておかないと。それが選手たちの技術アップ、モチベーションアップにつながっているんじゃないかな。去年、特に勝負どころでみんなが一体となってやっていたのは監督の手腕。今年も青木や村上を中心に、監督も一緒になってお客さんが見ていて楽しいチームになっていくんじゃないかな。

 高 左ピッチャーが絶対的に少ない。特にリリーフ。誰か一人でも出てきてほしい。それと、古田さんも凄く熱心に指導されていたけれど、石山をもう一回、勝ちゲームに投げるピッチャーにさせたい気持ちは強いです。

 古 どこを適材適所でやるかは監督の仕事なので、人材。去年とは違ったメンバーが、目の色を変えてやっていて、厚みを感じる。ただ、相手の見る目が変わっているのが現実。今年はマークされる。ヤクルトには絶対負けたくない、と。戦略も練ってくる。やられた方は覚えている。はね返すだけの強い気持ちを持っていかないといけない。期待しています。

 高 連覇なんて、そんな簡単にできない。ただ、そこに挑戦するのは当たり前のこと。なんとかしたい。野村監督もできなかった連続日本一、92、93年以来のリーグ連覇。非常に厳しいシーズンになるのは覚悟している。全力でぶつかっていきたいと思います。

 【取材後記】色紙に高津監督へのメッセージをお願いすると、古田臨時コーチの「また優勝するんでしょ」に「期待に応えます!」と指揮官。絶妙なかけあいはともに達筆。カメラマンが「字が似てますね」と話しながら撮影すると、高津監督は「兄貴だからね」と笑った。

 まさに気の置けない間柄で、いい意味で遠慮がなく実に軽快な対談。昨年からヤクルト担当となったが、高津監督がこんなにも笑う姿を初めて見た。

 信頼する“兄貴”は「勝ちに対する貪欲さは変わっていない」と高津監督。古田臨時コーチの指導は第2、第3クールの計8日間。初日に石川と清水のボールを受け、奥川や石山、育成の丸山翔や小沢の投球にも目を光らせた。中村や内山壮ら捕手陣に送球やキャッチングを指導。西浦と座り込んで1時間以上話し込む姿もあった。精力的に動き回った古田氏の教えをどう体現するか。注目したい。(ヤクルト担当・青森 正宣)

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