高校野球が変わる?24年センバツから“飛ばない”金属バット導入へ 高野連理事会で承認

[ 2022年2月19日 05:30 ]

甲子園球場
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 日本高野連は18日、大阪市内で理事会を開き、事故防止を目的に金属バットの新基準導入を決めた。現行の最大直径67ミリ未満から64ミリ未満に、打球部の素材の厚さを約3ミリから約4ミリに変更。細く、厚くして打球速度を抑える「飛ばないバット」で、24年センバツから完全移行する。新たな金属バットの基準が、高校野球に大きな変化をもたらす可能性は高い。

 金属バットの新基準は、事故防止が最大の目的だ。19年夏の甲子園で岡山学芸館の投手の顔面に打球が直撃し、頬骨を骨折。田名部和裕顧問は「鋭い打球で事故が発生することを常に気にかけてきた」と投手の重大事への懸念を理由に挙げた。

 高野連は実験を重ね、直径が3ミリ細く、打球部の素材が1ミリ厚い新基準を設定。これによりバットの反発性能を抑制。高野連の実験数値を時速に換算すると、平均打球速度では現行から6・3キロ低下するという。高野連が15・84メートルとして計算する打者から投手の距離間で、現行バットのライナーが到達するタイミングで、新基準の打球はまだ約58センチ手前にある計算になる。

 風などの条件で飛距離の正確な測定は困難だが、高野連関係者は「現在のものは木製バットと比べると20メートルくらい飛ぶ感じだった。新基準は約10メートル、もしくはそれ以下」と説明。01年に一度、規制が設けられたが、その後、打撃技術の向上などで、打力は右肩上がりだった。17年夏の甲子園は、大会記録の68本塁打。「打高投低」のバランス見直しも念頭にある。

 現役引退後、高校野球を熱心に指導するイチロー氏(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が、20年の講演で語った。「高校野球は“野球”をやっている。メジャーリーグは“コンテスト”。どこまで飛ばすか。野球とは言えない。“どうやって点を取るか”。高校野球にはそれが詰まっている」。小技、走塁、守備力などに重きを置き、イチロー氏の言う日本野球の強みである、感じ、考える野球がより発展する契機にもなりえる。

 24年には新基準に完全移行する。すでに高校通算50本塁打の花巻東・佐々木麟太郎(1年)は、23年度が最終学年。清宮(日本ハム)が持つ高校通算最多111本塁打の記録更新へ、最後の挑戦者になるかもしれない。(田中 健人)

 ≪社会人は02年から木製使用≫社会人野球は、79年から五輪などの国際大会に合わせて金属バットの使用を開始。しかし、00年シドニー五輪などでは木製バットが主流になったことに加え、高い反発力による飛びすぎの是正のため、02年から木製バットを導入した。一方、大学野球で金属バットが導入されたことはなく、木製の使用が続いている。

 ▽その他の決定事項 顎ガードつきヘルメットの使用が可能となった。また、今夏、米フロリダ州で開催予定のU18W杯高校日本代表チームのコーチ陣が決定。監督は明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督(66)、ヘッドコーチは花咲徳栄(埼玉)の岩井隆監督(52)、コーチは智弁学園(奈良)の小坂将商監督(44)、沖縄尚学の比嘉公也監督(40)が務める。

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