【内田雅也の追球】3時間18分の長編映画で知った基地問題の原点 阪神キャンプ休日に「沖縄」を考える

[ 2022年2月19日 08:00 ]

那覇市の国際通り
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 沖縄は終日冷たい雨が降り、散歩はあきらめた。阪神のキャンプ休日。滞在先の恩納村のペンションでインターネット配信の映画を観た。

 沖縄本土復帰2年前、1970(昭和45)年公開の『劇映画 沖縄』で休憩をはさみ3時間18分の長編だ。米軍統治下の沖縄が描かれている。

 第1部『一坪たりともわたすまい』で強制的な土地接収が描かれる。画面に伊江島、伊佐浜の土地強制収用の看板が映る。演習場の金網の外で農作業をしていた「おばあ」が誤射で命を失う。娘が「死ねば、おじいの側に行けると言っていた」と基地内にある亀甲墓への埋葬を訴える。史実に基づいた描写だ。

 第2部は『怒りの島』とあった。米軍の弾薬修理工場で働く基地労働者の反対運動が描かれる。途中、信号無視の米軍車両に生徒がひかれて即死し、米兵が無罪となった事件が出てくる。生徒は米軍兵士との間にできた子で、幼いころから差別を受けて育った。

 創作とはいえ、実写を織り込んでの激しい描写に引き込まれる。当時、沖縄での撮影は困難で、スタッフは渡航を拒否され、奄美大島や徳之島でのロケと本土での撮影で構成した。それでも映画初主演だった地井武男は実家が青果問屋ということでバナナの買い付けと称して沖縄入りした。金網沿いを歩く地井の背後で、ベトナム出撃を繰り返したB52爆撃機の撮影に初めて成功した。

 今の基地問題の原点と言える作品である。観て良かった。そして自分自身の無知を思い知った。

 多くのプロ野球チームがキャンプを張る沖縄である。自分たちがいま、どういう土地で野球をしているのか。知っておいて損はない。いや、プロならば、知っておくべきではないだろうか。

 たとえば、阪神がきょう19日、練習試合を行う楽天キャンプ地、金武町にあるキャンプ・ハンセン1号門の隠し撮り映像が出てくる。毎日レンタカーで通り過ぎている石川の闘牛場のシーンがある。広島がキャンプを張るコザ(沖縄市)の歓楽街が生々しく映っている。巨人キャンプ地にほど近い、那覇の国際通りで、ドルでの物の売り買いがみられる。

 今年は本土復帰50年の節目にあたる。練習場所を提供され、地元の理解や協力を受けている沖縄のことを考えてみる。そんなキャンプ休日があってもいい。 =敬称略= (編集委員)

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