片岡篤史氏が提言 阪神・佐藤輝は「修正能力」磨け ほぼ同じ打ち取られ方した後半戦踏まえ対策を

[ 2021年11月9日 07:00 ]

本紙評論家が振り返る矢野阪神3年目の「光と影(1)」

スポニチ本紙評論家・片岡篤史氏

 シーズン最後までヤクルトと優勝争いを演じた今季。昨季からの確かな成長を感じた一方、16年ぶりの頂点に届かなかった矢野阪神には、一体何が足りなかったのか。スポーツニッポン新聞社では本紙評論家陣による緊急連載「矢野阪神3年目の光と影」を、9日からスタート。第1回は中日の新2軍監督に就任した片岡篤史氏(52)が、佐藤輝明内野手(22)について長短を掘り下げて分析。来季への課題として「修正能力」を掲げた。

 昨年のドラフト直後にインタビューした際、私は彼の成績を「打率・280、20本塁打」と予想した。そんなに飛ばない大学野球のボールで、センターから逆方向にバンバン飛ばしていたのが今では懐かしい。

 キャンプから飛距離が注目されると、オープン戦ではドラフト制以降では最多の6本塁打。シーズンが始まっても浜風を物ともせず、広い甲子園が狭く感じられるほどの、ルーキーらしからぬ豪快な一発を見せてくれた。

 逆方向に打てるというのは、後ろ手である左手の使い方がうまいからだ。右投げ左打ちの野手は右手で細工する選手が多く一般的には巧打者が多いが、佐藤輝の場合は左手と左足で押し込むことができるし、人並み外れた体全体のパワーもある。何度かシーズン中も書いてきたが、詰まることを嫌がらず、差し込まれても打つことができる。それゆえ、真ん中からやや内寄りのボールに振り遅れた打球が、センターから逆方向への本塁打になっていることも特徴の一つだろう。

 一時は35本塁打ぐらい打つのでは?と思ったほど前半戦は素晴らしかった。当初の想像以上だったし、久々に球界を代表する選手が出てきたと感じたものだ。一転、8月17~19日のDeNA3連戦で3本塁打したのを最後に後半戦は苦しんだ。

 その要因がフォームをはじめとする技術的なものなのか、体力的なものなのか、いろいろとあるだろう。ただ、いずれにせよ、佐藤輝の能力を思えば59打席連続無安打というのは、あまりにも長すぎた。もう少し、何らかの対処をできたのではないか。

 というのも、打ち取られ方がほぼ同じだった。インハイ(内角高め)に速球を投げられ、追い込まれたら低めに落ちるボール球を振らされる。相手バッテリーも前半戦で長打にされたカウント球のカーブ、スライダー系の半速球を全く投げなくなっていった。心のどこかに“いつかは打てるようになるだろう”という考えもあったのではないか。プロのデータに基づく、徹底した攻めを痛感したことだろう。

 大切なのはこの秋、オフ、来春キャンプで、どのような修正を施していくかだ。プロで最も大切なのはその修正能力で、1年、1試合、1打席の中で修正していくことが求められる。球界を代表する強打者になるためには、必要な要素と言える。

 2軍落ちも経験したし、しびれるような終盤の優勝争いも経験することができた。それらを踏まえ、来年はどんな成績を残してくれるのか。生駒グラウンドでのインタビューを懐かしく思い、名古屋から見守りたいと思う。

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