田中 “サヨナラ危機”にスーパーけん制 あの鈴木からプロ9年目初

[ 2016年10月11日 08:00 ]

セ・リーグCSファーストS第3戦 ( 2016年10月10日    東京D )

<巨・D>9回無死一塁、けん制で一走・鈴木尚をアウトにする田中
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 巨人に吹く追い風をぴたっと止めた。けん制球。DeNA・田中が投じた1球が、勝利を大きく、大きく引き寄せた。

 3―3同点の9回から4番手で登板。先頭の村田を遊撃内野安打で出すと、一塁側ベンチから満を持してオレンジの手袋をした鈴木が現れた。代走131盗塁のプロ野球記録を持ち、通算228盗塁を誇る。今季も成功率10割の10盗塁を、勝負を懸けた局面で決め続けてきた。その究極の「足のスペシャリスト」を刺した。

 現役当時、同じ中継ぎ左腕だった篠原投手コーチは「どんな投手もけん制で刺すのは年に1、2度。それが接戦の貴重な場面で出た」と目を細めた。田中にとっては今季初、どころではない。プロ9年目で初だった。

 カウントは1―1。その2球の間に、DeNAベンチはこれまでけん制刺を成功させたことがない左腕の“勝機”を見いだした。光山バッテリーコーチは、2球で示した鈴木の反応からこう感じ取った。「走るのは分かっていた。それなのにホームへ投げたのに(一塁へ)バックする動作をしたので(田中の)癖が見抜けていないと思った」。すぐさまラミレス監督に「けん制を2球入れましょう」と助言した。複数投げれば刺せる。そう踏んだ。

 1度目。鈴木は塁に戻った。そして、2度目――。一度スタートを切りかけてから慌てて帰塁した鈴木を完璧なタイミングで仕留めた。

 サヨナラの走者を消した後は阿部を一ゴロ、長野を空振り三振に仕留め、延長10回も3者凡退。殊勲の田中は「まさか自分が刺せるとは思ってなかった」と振り返ったが「先頭打者を出したり、安打を打たれることはあると思ってマウンドに上がっている。想定の範囲内だった」という。走者を出せば当然、鈴木が出てくる。球を長く持って走者をじらしたり、タイミングを変える練習はしてきた。今季61試合に登板し、23ホールド。常葉学園菊川(静岡)では07年センバツを制し、勝負度胸は抜群だ。

 光山コーチの観察眼と田中の陰の努力。2つが結実し、ファイナルSへの扉を開いた。(君島 圭介)

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