ラミマジックさく裂!“伏兵”嶺井がV打 G倒で下克上

[ 2016年10月11日 05:30 ]

セ・リーグCSファーストS第3戦 ( 2016年10月10日    東京D )

<巨・D>関根(右)からウイニングボールを受け取るラミレス監督
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 ラミレスマジックさく裂!セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージは10日に第3戦が行われ、CS初出場のDeNAが巨人に4―3で勝って対戦成績2勝1敗で突破を決めた。延長11回、嶺井博希捕手(25)が決勝打。アレックス・ラミレス監督(42)が途中出場させたレギュラーシーズン出場わずか11試合の伏兵が、大仕事を果たした。12日開幕のファイナルステージ(6試合制)は、25年ぶりにリーグ優勝した広島とぶつかる。

 采配は「ハイサイ」から始まっていた。試合前練習でのこと。ラミレス監督は沖縄出身の嶺井にいつものように「ハイサイ(元気?)」と方言で話しかけた。そして、こんな言葉を続けた。「早い段階で使うから準備をしておくように」――。

 かけた魔法が4時間21分に及んだ試合の最終局面で効いた。3―3の11回1死二塁。嶺井のバットから左翼フェンス直撃の適時打が生まれた。昨季はチーム最多の73試合で捕手を務めながら、今季は開幕1軍を逃し、11試合の出場。そんな伏兵が、ファーストS突破に導くヒーローになった。

 「今年はチームの力になれなかった。それなのにここに立たせてもらって、皆さんにありがとうという気持ちです」

 声が弾む。確かに、CSでも「戦力外」のはずだった。当初は2軍が参加するフェニックス・リーグ行きが予定されたが、9月29日に1軍に呼ばれた。基本形だった戸柱、高城の捕手2人制から、ラミレス監督が「3人制の方が、より攻めの采配ができる」と判断したためだった。

 レギュラーシーズン3位とあって1勝1敗1分けなら敗退する状況下、同点の8回に「攻め」に出た。2死一、二塁。左腕・山口から点を奪うため、左の戸柱に右の代打・嶺井を送った。ここでは二飛に凡退したが、そのまま守りに就き、第2打席で期待に応えた。

 正捕手を下げた決断のもう一つの意図。指揮官は、今季の巨人戦出場が3試合で一度もスタメンがない男に、戸柱らとは「全く違った配球になる」と期待したのだ。11回までの零封はまさに狙い通り。総力戦を覚悟して打った布石が、巨人を撃ち抜いた。

 嶺井は気遣いの男だ。酒席で乾杯を勧められるままに酒をがぶ飲みし、他の選手には焼酎と偽った水を差し出す。そして、努力の人。正捕手候補筆頭から甘んじた2軍暮らしを「自分の実力が足りない」と受け入れ、腐らなかった。1軍にいる時と同様に、配球などベンチで気づいたことを常にメモ。打撃では今日は変化球だけ、今日は直球だけ…とテーマを常に設定した。中でも取り組んだのは、代打出場の増加を想定して「初球から振る」ことだった。V打は田原誠が投じた、初球のスライダー。「(2軍での)経験が生きたかなと思います」と小さくうなずいた。

 試合後。ラミレス監督はナインを青で染まる左翼席前へと促した。ラミレスコールが響く中、一礼して誓った。「最後まで戦い抜いて日本シリーズに出場して、ホームに戻ってきます」。マジカルでロジカルな采配のもと、下克上の道を進む。(中村 文香)

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2016年10月11日のニュース