満塁で抑え、満塁で打てなかった二刀流・大谷翔平

[ 2016年10月11日 11:35 ]

 【宮入徹の記録の風景】まるで漫画の主人公のようだ。投打二刀流の日本ハム・大谷翔平の凄さを、ファンはこんな風に表現する。無理もないだろう。今季の大谷は打っては323打数104安打、打率・322、22本塁打、67打点。投げては10勝4敗、防御率1・86。投打どちらの数字を見ても、専任の選手に引けをとらないのだから。

 長いプロ野球の歴史を振り返っても、同じシーズンに10勝と100安打は49年阪急・野口二郎(10勝、109安打)まで1リーグ時代に3人(4度)しかおらず、この中で本塁打が最も多かったのは46年阪神・藤村富美男の5本。2桁勝利、100安打に加え2桁本塁打は、大リーグにも例がなく空前絶後の記録誕生となった。

 1リーグ時代といえば、今から60年以上も前のこと。投手力、打撃力とも専門化した今のプロ野球とは話が違う。実際にドラフト制後、投打二刀流は近鉄・永淵洋三、ヤクルト・外山義明、オリックス・嘉勢敏弘らが短期間に記録した例があるくらい。本格的な投打二刀流は夢物語になりつつあったが、大谷はこうした常識を打ち破って見せた。

 もっとも、大谷に関しては喜べない数字もある。満塁の場面での明暗だ。今季の投手・大谷はピンチらしいピンチは少なく、満塁にしたのはわずか3度。7月10日ロッテ戦の初回満塁でナバーロに先制犠飛を打たれたものの他の2度は凡打に退けた。

 ところが打者・大谷は満塁での打席は13度あって結果は9打数0安打。押し出しが1度に3犠飛で4打点を記録したが安打は打てずじまい。今季、両リーグで満塁機で10打席以上ノーヒットだったのは、他にロッテ・清田が11打席で8打数無安打(3押し出し)に抑えられたのがあるだけ。大谷は最も多く満塁機で安打の出なかった打者ということになる。

 12日から日本ハムはソフトバンク相手にクライマックスシリーズファイナルステージを戦う。大谷のCS通算投手成績は3試合1勝1敗、防御率6・89。打撃成績は18打数3安打、打率・167で本塁打、打点は0。投打ともやや精彩を欠いている。それでも、大谷はレギュラーシーズンで投打の各種記録を塗り替えてきた。短期決戦でも漫画のヒーロー顔負けのパフォーマンスを期待したいところだ。(専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、1回目の91年から25回連続で資料説明役として出席。

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