メッツ終戦の陰で…過酷な24時間を“完走”した裏方の鉄人

[ 2015年11月11日 14:40 ]

ワールドシリーズ第5戦で延長戦の末敗れ、静まり返るメッツのベンチ(AP)

 1986年以来、29年ぶり3度目のワールドチャンピオンを狙ったメッツは、ワールドシリーズでロイヤルズに1勝4敗で敗れた。その終戦を迎えた11月1日、本拠地での第5戦。誰よりも過酷な24時間を駆け抜けた一人の裏方さんがいた。

 メッツのクラブハウスマネジャー補佐を務めるデーブ・ベルニさん。伝統のニューヨーク・シティ・マラソンにエントリーした時点では、チームが勝ち抜いてその日がワールドシリーズの第5戦当日だということに気付いていなかったという。

 午後8時すぎに始まった第4戦に敗れ、試合後のクラブハウスの片付けが終わったのは1日の未明。テリー・コリンズ監督の監督室にあるソファーで数時間の仮眠をとり、午前9時50分にスタートの号砲が鳴るスタテン・アイランドへ向かった。「本当は第4戦の試合中に少し仮眠しておこうとも思ったんだけどね。なにせワールドシリーズだよ、そんなことはできなかったね」と眠い目をこすり、重い身体に鞭打った。

 スタート時刻は9時50分以降、午前11時まで、4つのグループに分けられているが、配慮され最も早いグループに入れられた。午後8時開始の第5戦の準備へ、シティ・フィールドへ戻る必要があったからだ。

 結果は見事、4時間40分で完走。ニューヨークの5つの区を駆け抜け、5つの橋を渡り、セントラル・パークへ。レース中には主将のデービッド・ライトから携帯電話に激励のコールを受けたという。「レース中で、コースを走っている最中だったんだけどね。本当に驚きだったよ。素晴らしく、勇気付けられた」と後押しに感謝した。

 疲労困ぱいで迎えた第5戦、チームは延長12回の末に敗れ終戦を迎えた。すでに日付けは2日を迎え、全ての作業が終わったのは午前3時すぎだった。「仕事にはちょっと遅れちゃったんだけどね。ワールドシリーズの特別な空気が、疲れを忘れさせてくれた」とクラブハウスで用具整理や食事の手配、資料の準備など動き続けた。

 実は私も今年2月、ベルニさんと似た体験をした。2月22日の東京マラソンに挑戦。初のフルマラソンを完走し、ゴールの東京ビッグサイトから越中島の本社へ急ぎ、息つく暇もなく午後3時には出社。そのまま翌日の午前1時半まで勤務した。

 ただ前日は休日をいただいていたし、就業時刻もベルニさんには及ばない。マラソンのタイムは4時間24分でわずかに上回ったのだけど、とてもじゃないが及ばない。

 主将のライトに限らず、多くのスタッフや選手がベルニさんの挑戦を応援し、士気も上がったという。願い叶わずチームは終戦を迎えたが、ドラマ24を上回るタフな1日を駆け抜けた陰の鉄人がメッツにはいた。(後藤 茂樹)

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2015年11月11日のニュース