NPB、処分発表も野球賭博の全容解明できず…調査委に「任意」の壁

[ 2015年11月11日 05:30 ]

会見する熊崎コミッショナー

 プロ野球の熊崎勝彦コミッショナー(73)は10日、野球賭博に関与したとして巨人の福田聡志投手(32)、笠原将生投手(24)、松本竜也投手(22)の3選手を無期失格とし、巨人に制裁金1000万円を科す裁定を下した。野球賭博で選手が処分されるのは、69年に西鉄(現西武)の投手の八百長が発覚したのに端を発した「黒い霧事件」以来。一方、最終報告書を提出した日本野球機構(NPB)の調査委員会は十分な聴取の協力が得られなかったとし、全容解明には至らなかったと明かした。

 熊崎コミッショナーは午前10時、NPBの調査委員会(大鶴基成委員長=弁護士)から処分案を盛り込んだ最終報告書を受け取った。調査委が午後4時から会見し、最終報告内容を公表。熊崎コミッショナーは同5時からの会見で、謝罪をした上で処分を発表した。

 「断腸の思いでありますが、3選手につきまして、いずれも無期の失格処分とする裁定を行いました」。巨人球団に対しては指導、管理が不十分だったとして1000万円の制裁金を科した。

 巨人が福田の野球賭博関与を発表したのが10月5日。熊崎コミッショナーから調査を委嘱された調査委は、同21日の中間報告で、笠原、松本竜も野球賭博に関与し、3選手が野球賭博常習者の大学院生のA氏、飲食店経営者のB氏と交際していた事実を明かしていた。

 最終報告書では、笠原の中学校の先輩でA氏を紹介したというC氏、さらに「Aが自分が知っていると吹聴していた(巨人の)コーチなど3名」、「Bの経営する店に飲食に行っていた(巨人の)選手3名」からも参考に聴取したことが明らかにされた。聴取は延べ約65時間に及んだという。

 しかし、調査委は「重要な関係者から十分な聴取の協力が得られず、携帯電話の提出も受けられなかった。そのため組織的全体像までを明らかにできているものではない」と説明せざるを得なかった。大鶴委員長は「確証がなければプライベートでもある携帯の提出は求められない」と苦渋の表情。A氏、B氏にも核心に迫る2度目の聴取を求めたが拒否されたという。調査が任意であることから「(我々には)何の強制力もない。聴取に応じてくれなければ話は聞けない」と限界があったことを明かした。

 巨人以外の11球団選手に対してもアンケート調査のみにとどまった。福田、笠原、松本竜の3選手に関しては処分を確定できたが、球界と野球賭博の関係についての全容解明には程遠い調査内容。元東京地検特捜部長の経歴を持つ熊崎コミッショナーは、暴力団などの組織的な背景の有無について「そこが知りたいところだが、十分に明らかにできていない。それは調査委も認めている」とじくじたる思いを口にした。調査委は「常設機関なので(調査は)継続する」という。

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2015年11月11日のニュース