若菜嘉晴氏 「練習の鬼」ソフトバンク・小久保新監督の手腕に期待

[ 2023年10月31日 06:00 ]

ソフトバンク・小久保監督
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 【若菜嘉晴 鷹論】ソフトバンク・小久保裕紀監督が誕生した。「王イズム継承」がテーマの一つだという。言葉として発するのは簡単だが、いざ、説明しろとなるとひと言では語れない。

 王貞治会長は自分にも他人にも厳しくやってきた。練習で叩き上げ、通算868本塁打の世界記録を樹立し、世界の王と呼ばれた。監督としてダイエーに呼ばれたのが95年シーズン。借金18の5位に終わり、翌96年は帰りのバスに生卵を投げつけられる事件が起きた。そんな状況の中で当時の王監督はただ「優勝しないとダメだ」と言い続けた。南海からダイエー草創期は負けが当たり前だった。チームの誰もが、その言葉を信じなかった。ただ信念を曲げなかった結果、99年にリーグ優勝、日本一になる。

 そのチームの中心にいたのが小久保新監督だった。私は彼が入団した頃、コーチを任されていた。とにかく練習した。朝からずっと振り込み、全体練習が終わっても日が暮れても宿舎に戻らずに振り続ける。コーチが先に帰るわけにもいかなかった。その姿に松中信彦、井口資仁、城島健司が続いていった。彼もまた、練習の鬼と化した結果、球界を代表する打者となった。

 王貞治=小久保裕紀だと私は思う。今季のチームを振り返れば規定投球回に到達した先発がいなかったり、打つ方は打球が飛ばなかった。練習の練習しか、できていないように感じた。データなどは昔とは比べものにならないほど、充実した。ただ、大事なのは選手の中身だ。ここ数年、柳田が出てきたのを最後に選手たちから悲壮感がなくなったと思う。もう一度、しっかりと練習から叩き直すという意味では小久保監督は適任だし、期待したいと思っている。

 王会長は就任から初優勝まで5年かかった。柳田や近藤らチームに地力はあるから優勝争いはするだろう。ただ、同時に若手を使うのは難しい。再び、常勝軍団に育てるまで時間はかかる。秋季キャンプは投手は筑後、野手は宮崎と別々でやるそうだ。新監督は存分に鍛えるに違いない。実りの多い秋になるのではないかと思う。

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