阪神 藤浪が“投げる理由” 完全復活告げる433日ぶり勝利の裏に家族への感謝の思い

[ 2022年8月21日 07:00 ]

セ・リーグ   阪神5―1巨人 ( 2022年8月20日    東京D )

<巨・神>スタンドに帽子を振る藤浪(撮影・篠原岳夫)
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 阪神・藤浪晋太郎投手(28)が20日の巨人戦で昨年6月13日の楽天戦以来433日ぶり、先発に限れば同4月16日のヤクルト戦以来491日ぶりの白星をつかんだ。2年連続で務めた開幕投手から6度目の先発で待望の1勝目。節目の10年目を迎え、近年は“投げる理由”に思いを巡らすことも増えた。長い低迷期を支えたものとは…。新人時代から密着してきた本紙記者の遠藤礼が迫った。

 10年目の藤浪がプロで過ごしてきた時間は今もなお、明暗入り乱れた濁流のように映る。先発一本で逆襲を期した今季も初勝利までがとにかく遠かった。投手としての評価は乱高下。傷ついたこと、失ったものも少なくない。そんな中、藤浪が“投げる理由”について言葉にするようになったのは、不振と重なるここ数年のことだ。

 「苦しい時も経験して“誰かのために投げたい”とより強く思うようになりましたね。球場のファンの方もそうですし、応援してくれる人たちのために。まずは両親、家族になりますよね」

 開幕投手を務めた今年3月25日も、父・晋さん、母・明美さん、弟の滉二郎(こうじろう)さんが3人並んで祈るようにスタンドから背番号19を見守っていた。

 高校入学の15歳で親元を離れたこともあり両親の存在の大きさに気づくのは普通の青年より早かったのかもしれない。名門・大阪桐蔭の寮生活では外食は2カ月に1回。家族で限られた時間をともにして寮に戻る帰り際、明美さんの頬を伝うものがあった。「自分が帰る時、母は泣いてましたね」。何げないことのありがたみも痛感させられた。

 「泥だらけのユニホームを洗うことがどれだけ大変か分かりました。だからその分、親孝行しようと思いますよね」

 プロ入り後は「30分で帰省できるので」と堺市にある実家に立ち寄ることも多い。「シーズン中も親に顔を見てもらおうと思って。夕飯だけ食べに行ったりしてます」。“お土産”を持参することもある。プロ入り後、趣味で海釣りを始めると、すぐに特大のクーラーボックスを購入。1メートル級の大物も収まるサイズで「釣った魚は実家に持っていったりしてる」と食卓に新鮮なメジロ、サワラ、タイが並ぶことも珍しくない。

 20歳を過ぎると父・晋さんとは酒を酌み交わすことも多くなった。「親父もあの年で息子と酒を飲むのは一つの夢だと思うので…。そういう意味では親孝行できてるんですかね」。晋さんの59回目の誕生日だった今年6月26日も実家に出向いて祝福した。4カ月前の開幕戦ではあと一歩のところで勝利投手になれなかった。シーズン終盤にようやく届けた今季初勝利。一家だんらんの時間、晩酌…何よりも尊い親孝行になった。(遠藤 礼)

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