【内田雅也の追球】チームの粘り呼ぶ貴重な四球 木浪が梅野が“つなぎ役”果たした

[ 2022年8月21日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―1巨人 ( 2022年8月20日    東京D )

<巨・神>2回、木浪が四球を選ぶ(撮影・篠原岳夫)
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 阪神が前半にあげた5点はすべて2死からだった。連敗を脱出した18日ヤクルト戦も2死から計8点。前夜(19日)の巨人戦も2死から3点を追加した。大リーグでは「2死後打点」と特記する。「あと1人」からの勝負強さを評価する。

 この攻撃のなかで、貴重なつなぎ役を果たしていたのが2つの四球だった。選んだのは木浪聖也と梅野隆太郎である。

 木浪は0―0の2回表2死一塁、見逃し、ファウルと2球で追い込まれながら粘り、いずれも遠め、低めの際どい4球を見極めて歩いた。

 元来が早打ちのタイプで四球は少ない。今季も出場20試合目、41打席目で初めての四球だった。

 このつなぎが効いて、続く梅野が右前に先制打を放ったのだった。

 梅野の四球は4回表だった。1死一塁、フルカウントから走者スタート、左腕の膝元直球を見極めた。ランエンドヒットでは際どい球はつい手が出るところだが、引きつけてバットを止めた。

 1死一、二塁とし、藤浪晋太郎の送りバントで2死二、三塁となった。中野拓夢の内野安打が適時打となり、島田海吏のセーフティーバントも適時打となったのだ。

 地味だが貴重な四球だったことが分かる。

 四球と、それにともなう出塁率を重視する考え方は映画にもなったマイケル・ルイス『マネー・ボール』(ランダムハウス講談社)にある。主人公のアスレチックスGMビリー・ビーンの師匠、サンディ・アルダーソンが四球や打席での粘りを評価した。

 同書に<「フォアボールは、投手がコントロールを乱しただけで、打者の功績ではない」と反論するのは間違っている>とある。アルダーソンは傘下のマイナーチームの監督を呼び「四球を増やさなかったらクビだ」と言い渡した。すると、軒並み四球が増えたのだ。

 チーム方針で四球は増やせるのだ。監督の特性が出るのだろう。和田豊が監督時代は四球が多かった。矢野燿大は就任後の四球数は順にリーグ5位、4位、4位、今季は目下3位と平凡だ。積極性を前面に出し、3ボール0ストライクからの強振や投手凡退直後の初球打ちなども見かける。

 積極性と選球を両立させたい。この日のように各打者の打席での忍耐や自制心がチーム全体の粘りを呼ぶ。=敬称略=(編集委員)

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2022年8月21日のニュース