【内田雅也の追球】努力で身につけた技術が支え DeNAの「陽動」に動じなかった青柳

[ 2022年7月23日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6―3DeNA ( 2022年7月22日    甲子園 )

<神・D>初回無死、バントの構えを見せる森(撮影・後藤 大輝) 
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 思えば、1回表先頭の森敬斗の打席がDeNAの作戦を示していた。1、2、3球目といずれもセーフティーバントの構えをしてきた。

 阪神先発の青柳晃洋は今季これまでDeNAに2戦2勝、昨年から6連勝中だった。苦手の相手を何とか攻略しようとの思いがにじみ出ていた。

 それにしても、このセーフティーバントの構えを先発投手の坂本裕哉(4回表2死一塁)、そして打率リーグ首位の佐野恵太(5回表2死無走者)までも行ってきたのには驚いた。

 5回まで5人の打者が計11度行ってきた。ボールが7球とやや制球が乱れたのが、わずかながらの効果か。しかし、ストライク見送りが3球で、実際にバントを試みたのは2回表の楠本泰史(ファウル)だけだった。陽動作戦だったのである。

 「陽動」を辞書でひけば「本来の目的・意図を隠し、他へ注意をそらすために、わざと目立つように別の行動をとること」とある。あの構えはセーフティーバントで一塁に生きようとするとするよりも、本来の狙いは選球や揺さぶりにあった。

 青柳は動じなかった。昔なら心も投球も乱れてしまったかもしれない。苦手だったバント処理や一塁送球も繰り返し練習を積んでうまくなった。努力で身につけた技術が支えとなり、動じない心が備わっていた。

 得点圏に走者を背負ったが適時打は許さなかった。球数はかさんで6回99球と文字通り「汲々(きゅうきゅう)」としていたが、失点は楠本に浴びたソロの1点だけ。6回降板は不満だろうが、リーグ最多勝投手として堂々としていた。

 もう一つ、浜地真澄を書いておきたい。前の試合(20日・広島戦)で2点リードから逆転を許し、敗戦投手となった。

 あの夜、当欄で「不運」だと書いた。打ち取った当たりが安打となったり、味方失策があったりしたためだ。

 この夜、青柳を継いで7回表に登板し3人で切った。見事にやり返したのだ。投げた15球中直球が13球。回転数の多い、伸びのある速球だった。リードはまだ3点の時点で、必勝継投を任せるだけの力量は十分ある。

 夏休みの甲子園は少年少女野球チームなど子どもたちが目立った。快勝の裏にある、青柳の努力や浜地の不屈が伝わればと願った。=敬称略=(編集委員)

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2022年7月23日のニュース