メジャー初Vの笹生 日本人父の猛特訓とフィリピンの整った練習環境で結実

[ 2021年6月8日 05:30 ]

米女子ゴルフツアー  全米女子オープン最終日 ( 2021年6月6日    カリフォルニア州 オリンピック・クラブ=6486ヤード、パー71 )

ゴルフの全米女子オープン選手権でメジャー初優勝を果たし、父の正和さん(右)とトロフィーを手に笑顔を見せる笹生優花
Photo By ゲッティ=共同

 優勝が決まった直後の現地テレビ局のインタビュー。満面の笑みを浮かべ、流ちょうな英語で答えていた笹生が言葉を詰まらせたのは、家族への思いを口にしたときだった。

 「とにかく、家族にありがとうと言いたいです。彼らがいなければ、私はここにいません…」。一瞬の沈黙の後、涙を拭いながら続けた。「ごめんなさい、こういうの慣れていなくて。私はもっと、上を目指してゴルフを頑張っていきます」

 日本人の父・正和さん(63)、フィリピン人の母・フリッツイさん(44)を持ち、母の母国で生まれた。4歳の時に日本に来て、約4年間を過ごしたが日本語を満足にしゃべれずに苦労した。友達をつくることもできず、父の練習についていくようになったのがゴルフと出合ったきっかけだ。幼稚園の頃に「先生」だった将来の夢は、ゴルフを本格的に始めた小学2年から「プロゴルファー」に変わった。「世界一になる。世界ランキングで1位。そして、メジャーも全部獲りたい」と夢を持ち、格安でコースを回れるなど練習環境の整ったフィリピンに移住。サンドバッグ打ちや野球のノックを取り入れるなど、父と2人で独自のトレーニングに励む日々。いつもそばで支えてくれたのは、家族だった。

 そして19年に、夢への第一歩となるプロテストに合格した。アジア大会金メダルなどの実績を引っ提げて臨むプロデビュー。しかし18歳が心配していたのは、ゴルフではなく「友達関係が…。プロはみんな仲良い人がいるから」というもの。フィリピン代表だっただけに、仲のいい選手がいない。だが、その心配もすぐに解消される。初優勝から2大会連続制覇と結果を残すと、仲間のプロから飛ばしの秘けつやショートゲームのコツを聞かれるようになった。1人で練習していた笹生の周りに、輪ができるようになった。

 今は努力の末、英語、タガログ語、日本語を操り、「少し」の韓国語とタイ語の5カ国語をしゃべる。世界一のゴルファーを決める最も歴史あるメジャーの優勝会見。日本、米国、フィリピンのメディアの取材に、それぞれの言葉で誇らしく応じた。

 《フィリピンでも初》全米女子オープンで米ツアー初優勝を飾った選手は笹生が21人目。また、フィリピン国籍の選手が海外メジャーを勝つのは男女を通じて笹生が初めてで、米女子ツアー優勝はジェニファー・ロサレスに続く2人目。ロサレスは05年SBSオープンなど2勝を挙げている。米ツアーメンバー以外のスポット参戦の選手がメジャーを勝つのは最近3年では19年全英女子オープンの渋野日向子、20年全英女子オープンのソフィア・ポポフ(ドイツ)、20年全米女子オープンの金阿林(韓国)がいる。

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