笹生快挙!師匠のジャンボ紹介した恩人感激、声弾ませ「最後は心で勝った」

[ 2021年6月8日 05:30 ]

米女子ゴルフツアー 全米女子オープン最終日 ( 2021年6月6日    カリフォルニア州 オリンピック・クラブ=6486ヤード、パー71 )

全米女子オープン最終日、バンカーショットを放つ笹生(AP)
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 女子ゴルフのメジャー最高峰、全米女子オープンを日本勢で初めて制した笹生優花(19)。プレー中にかぶっていたキャップのつばには「刀」の文字が刺繍(ししゅう)されていた。この一文字には、尾崎将司(74)との縁をつないだ恩人の思いが込められていた。また、快挙の裏には高校ゴルフ界の「名将」の存在もあった。

 「刀」の文字が入ったキャップを贈ったのは、スポンサーを務める日本刀販売店「銀座長州屋」(東京都中央区)の深海信彦社長(75)。大会に向けて「松山(英樹)でもやったんですから、かみ合えば優勝できます」とメールを送ったところ「了解致しました。頑張ります」と返信があったという。この日はテレビ観戦で優勝の瞬間を見届け「技術では他の選手に劣っていたかもしれない。でも、彼女は決して折れぬ心の持ち主。最後はその心が勝った」と声を弾ませた。

 関係者を通じて笹生と出会ったのは19年冬。笹生の父・正和さんが日本刀への造詣が深く、本人も一緒に店を訪れたことがあったという縁もあり、プロ1年目の昨年2月、日本で初めてスポンサー契約を結んだ。

 契約直後に贈ったのが「刀」入りのキャップ。刺繍の位置を日本刀の「鍔(つば)」と同じ読み方のつばにするなどこだわった。

 この一文字には「日本の心を持って戦ってほしい」との思いを込めた。「日本国籍を持っているとはいえ、フィリピンを拠点にしていた時期が長かったものですから、日本でプロになっても“フィリピンから来た怪物選手”と世間は見るかもしれない。だからこそ、謙虚で礼儀正しい武士の精神を表す刀の文字を彼女に託しました」。笹生は「刀」の文字を見て「かっこいい!」とすぐに気に入ってくれたという。

 笹生の運命を紡いだのも「刀」だった。深海氏は、日本刀の目利きとして知られる尾崎と親交があり、日本の練習拠点を探していた笹生を紹介。打つ球を見て尾崎は「あいつ、やるよ」とすぐ将来性を見抜いたという。

 圧倒的な飛距離から「女ウッズ」と、タイガー・ウッズに例えられる笹生。深海氏は、ウッズが21歳で初来日した際、日本刀を贈り対面したことがある。「彼女もウッズも目の底の光が他と全く違った」と力を込めた。

 深海氏はメジャー優勝の“ボーナス”を笹生と約束しており、具体的な金額も既に提示している。来月には東京五輪にフィリピン代表として凱旋する見通しで「活躍が楽しみ」と、さらなる高みへと磨きがかかっていくことに期待した。

 《渡米前に訪問「人生で一番うまい」しゃぶしゃぶ》笹生が「人生で一番うまい」とうなるのが1924年(大13)創業の老舗割烹(かっぽう)「銀座吉澤」のしゃぶしゃぶやすき焼き。長州屋に近いため、笹生は深海氏に連れてきてもらうことが多く、直近では渡米前の3月に訪問。吉澤裕介専務によると、笹生は「竹・雪コース(すき焼き)」(税込み1万2650円)、「肉づくしコース(しゃぶしゃぶ)」(同1万3200円)などを頼むという。吉澤氏は「コロナ禍で売り上げが以前の半分以下と苦しい中、非常に明るい話題で従業員の士気も上がりました」と声を弾ませた。

 《ゴルフ関連株価上昇》笹生の優勝を受け、週明け7日午前の東京株式市場でゴルフ関連企業の株価が上昇した。ゴルフ人気が高まるとの思惑から買い注文が集まった。東京証券取引所第1部上場でゴルフ情報サイトを運営するゴルフダイジェスト・オンラインは一時、前週末終値比130円(10・2%)高の1401円を付けた。笹生のスポンサーで、東証2部上場の塗料メーカー、ロックペイントの株価は一時5・9%高となった。

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