伊調馨 世界“不敗”継続も…辛口「15%」金

[ 2010年9月11日 06:00 ]

女子63キロ級で金メダルを獲得した伊調馨

 レスリングの世界選手権第4日は9日、ロシア・モスクワで行われ、女子63キロ級で、3年ぶりに出場した04年アテネ、08年北京両五輪覇者の伊調馨(26=綜合警備保障)が6度目の頂点に立った。02年の初出場初優勝以来、世界大会(五輪と世界選手権)不敗を守った。55キロ級の吉田沙保里(27=綜合警備保障)は自らの女子最多優勝記録を更新する8連覇を飾り、五輪と合わせて10大会連続の世界一。前日48キロ級で初優勝した坂本日登美(29=自衛隊)と合わせ、日本女子は五輪で実施する3階級を制した。

 伊調は休養前と変わらない盤石な戦いを見せた。だが、試合後は笑みを浮かべながらも首をひねった。「優勝してうれしいけど、自分のレスリングの半分も出せていない。(出せたのは)15%」と辛口の評価を口にした。
 各ピリオド残り30秒から攻めて「1―0で取る」堅実さは以前のままだ。決勝の第2ピリオドも終盤、片足タックルからの攻撃でものにした。だが、今の伊調が満足できる内容ではなかった。
 北京五輪で2大会連続の金メダルを獲得した後、カナダ・カルガリーに留学して、約1年間充電した。世界選手権は2度欠場。帰国した昨年12月以降、母校・中京女大(現至学館大)を離れ、東京に練習拠点を変更し、新たなスタイルの確立を模索している。
 目指しているのは論理的に動作を「証明できるレスリング」だ。「今までは感覚的だった」と抜群のセンスの良さで頂点を極めたが、最近は男子との練習を重ねて論理的な戦い方に目覚めた。
 今では組み手の指の使い方までにもこだわり、より攻める姿勢を出そうと努力を続ける。「やればやるほどレスリングが面白くなってきている」。北京五輪後は引退も考えたが、競技への情熱は以前にも増している。
 北京五輪後に、ともに戦ってきた姉・千春が青森・八戸西高の教員となり、戦列を離れた。「心の中で一緒に戦っている。君が代を聴いて千春を思い出した」と今でも支えにする。目標に掲げるロンドン五輪に向け、一人で取り組む26歳は大舞台で進化の一歩を刻んだ。

 ◆伊調 馨(いちょう・かおり)1984年(昭59)6月13日生まれの26歳。青森県出身。中京女大付高(現至学館高)―中京女大(現至学館大)卒。姉・千春の影響で3歳の時に競技を始める。女子63キロ級で02年世界選手権に初出場で優勝してから、五輪と世界選手権では無敗。1メートル66。

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2010年9月11日のニュース