19歳西山“銀”ロンドン五輪へ待望の新星

[ 2010年9月11日 06:00 ]

西山(左)はイリアディス・イリアスに攻められる

 柔道の世界選手権第2日は10日、東京・国立代々木競技場で行われ、男子90キロ級決勝に進出した初出場の西山大希(19=筑波大)は04年アテネ五輪81キロ級金メダルのイリアス・イリアディス(23=ギリシャ)に延長の末、一本負けを喫し、銀メダルに終わった。日本人男子としては87年大会無差別級の小川直也(当時明大、現プロ格闘家)以来、2人目の10代世界王者とはならなかったが、世界ランク1位の小野卓志(30=了徳寺学園職)が敗れる中、12年ロンドン五輪へ新星が誕生した。同81キロ級で高松正裕(28=桐蔭学園高教)、女子70キロ級で国原頼子(24=自衛隊)が銅メダルを獲得した。

 試合直後に流した涙を隠し、西山が淡々と試合を振り返った。「金メダルの期待に応えられず、申し訳ない気持ちです」。怪力で知られるイリアディスとの決勝。何度も技を仕掛け相手の体を浮かせながら最後は力でねじ伏せられた。「延長に入ったときは金メダルのことしか考えてなかった。あそこで決めるのが一流」とうなだれた19歳は「しっかり組めれば、世界のトップとも互角以上に戦えることが分かった」と鋭い目を光らせた。
 篠原信一監督が「守りに入らない柔道が、個人的に好き」と評する西山の柔道は、3歳から培われてきた。父・太郎さんは東海大柔道部で71キロ級(当時)として活躍。西山が道場に入り数年たつと、自ら指導に当たった。「最初は遊びみたいだった」柔道が、父の登場で変化する。「組み手や足の運び方とか、高校生でも理解できないことを言われ続けた」。できなければ「毎日20回以上、殴られた」と振り返る。
 その本物志向が、体の成長とともに力に変わった。父の元を離れ、神奈川・桐蔭学園高に進学しても、勝負ではなく攻撃にこだわった。この日は「対戦相手の様子を見すぎてしまった」と本来の攻撃力を発揮できなかったことを悔しがったが、筑波大で指導する金丸雄介コーチは「パワーはあるし、技の切れもある。寝技がうまくなればもっと伸びる」と将来性に太鼓判を押す。
 今春、弟で73キロ級のホープ雄希が筑波大に入学。2人暮らしの毎日で「趣味」と言い切る料理を毎日作るきちょうめんさも西山の魅力だ。「試合前に弟からメールが来たんです。“金は獲ってほしくない。どうせ獲るなら2人で獲ろう”って。その通りになってしまった」。ロンドン五輪へ、あと2年。10代金メダルの偉業こそならなかったが、夢が2人だけのものではなくなったのも事実だ。

 ◆西山 大希(にしやま・だいき)1990年(平2)11月20日生まれの19歳。広島県東広島市出身。7歳から柔道を始め、西条中、桐蔭学園高を経て、現在は筑波大2年。09年グランドスラム東京2位、今年はグランドスラム・リオデジャネイロ3位、モスクワ2位。組み手は左、得意技は大外刈り。1メートル79。

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2010年9月11日のニュース