伊集院静さん常連おでん屋悲痛 突然の別れに女将「うそだよね…」

[ 2023年11月27日 05:30 ]

 14日に肝内胆管がんのため73歳で死去した作家の伊集院静さんの訃報を受け、常連だった東京・湯島の老舗おでん店「多古久」でも悲しみが広がっている。

 明治37年創業の老舗のおでん屋さん。のれんをくぐり戸を開くと、おでんが煮込まれた大きな丸い鍋と、店を切り盛りする宮崎和子さん(76)が出迎える。

 「訃報を聞いて、“えっ、ウソだよね”とポカンとして。5月に電話でお話しした際に“東京に行った時に、調子良かったら行くから”とおっしゃってて。それが最後に聞いた伊集院さんの声でした」

 伊集院さんは15年ほど前からの常連だった。多くの文壇が執筆の場としていたお茶の水の「山の上ホテル」を定宿としており、ホテルから訪れたのが最初。それからは東京にいる際は、定宿を別の場所に移す5年ほど前まで毎週末のように同店を訪れた。

 カウンターの一番奥の席が定位置。その横の壁には、「腹」という字を横にした伊集院さんの直筆の色紙が飾られている。和子さんの母・誠子さんに宛てたもの。「伊集院さんはお店にサインをすることをほとんどしないそうなんですけど、母がお願いしたら仙台から送ってくださったんです」

 おでんが名物だが、伊集院さんは魚を好んで食べたという。和子さんは「子持ちガレイが好きで“ナメタガレイを煮てくれ”って。それをよく召し上がってました。おでんはひとつかふたつ。電話で“今から行くから、何か作っといて”と連絡されることもありました」。お店の味はもちろん、店のことが大好きだった。ホテルに戻って執筆する時は、おにぎりを持って帰った。お酒が入って上機嫌になると、自身が作詞した近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」を口ずさむことも。

 伊集院さんのファンも店の常連になった。ある時、ファンの客を気に入り、焼酎をボトルでプレゼントした。ラベルには直筆で「思ったとり、おまえらイイじゃねえか!この野郎!」「わかったから行儀良く。静」と言葉が添えられている。その常連客はこのボトルに何年も焼酎をつぎ足して飲んでいる。

 和子さんの母・誠子さんが亡くなった時は、伊集院さんも葬儀に参列。「毎年、母の命日にお線香を送ってくださった。本当に気遣いの人、優しい人でした」と早すぎる死を悼んだ。

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