「舞いあがれ!」最終回 舞の「一つ目の目的地」の意味合い

[ 2023年3月31日 08:30 ]

連続テレビ小説「舞いあがれ!」最終回で、舞(福原遥)が空飛ぶクルマを操縦する場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の最終回が31日に放送された。主人公の舞(福原遥)は2027年、実用化した空飛ぶクルマで五島上空を飛行。操縦かんを握って「間もなく一つ目の目的地に到着します」とアナウンスし、感無量の表情を浮かべた。

 制作統括の熊野律時チーフプロデューサーはラストシーンについて「舞がこれまで一生懸命にやってきたことが報われた瞬間を描いた。ただ、舞の人生はこれで終わるわけではなく、これからまた逆風を受けることもあるだろう。『一つ目の目的地』というセリフにはそのような意味合いが込められているが、最終回は舞の人生がうまくいっているところで終わりたかった。未来への希望を感じていただければ」と語る。

 最後の五島ロケには、舞役の福原遥をはじめ、祖母・祥子役の高畑淳子、夫・貴司役の赤楚衛二、母・めぐみ役の永作博美、娘・歩役の浅田芭路らが参加した。

 熊野氏は「五島の方々にお声がけして、エキストラとして300人以上の方々に集まっていただいた。舞が幼少期にバラモン凧をあげた場所と同じ場所で子供たちにバラモン凧をあげてもらった。バラモン凧をあげながら空飛ぶクルマが飛んでいくところを見た子供たちがこれから未来を担っていく。五島のみなさんのご協力があってこそのシーンとなって、撮影に参加した福原さんら出演者も感激していた」と振り返る。

 最終回では、かつて舞と久留美(山下美月)が貴司の行方を追って訪れた五島・大瀬埼灯台もクローズアップされた。今週は、舞が五島に長期滞在していた頃に出会った少年・朝陽くんが成長した姿(又野暁仁)で登場するなど、物語の伏線の回収が見受けられた。

 熊野氏は「伏線を狙うという考えはなかった。例えば、朝陽くんの場合、少年時代の朝陽くんを描いた時、脚本の桑原亮子さんと『その後のことを知りたい。成長した姿を見たい』という話をしていた。仕掛けを作るというより、その人物を丁寧に描き、それが舞の人生とどう重なればいいかという感覚で作った」と説明する。

 このドラマ全体の魅力を担っていたのは、桑原さんの脚本の細やかさだろう。

 熊野氏は「桑原さんの脚本は、登場人物それぞれの一言一言の奥行きが素晴らしい。最終回では、最後に舞の『間もなく一つ目の目的地に到着します』という言葉を置いた。この言葉で、これから二つ目、三つ目の目的地があるという、未来へのイメージがわく。この言葉でなければ広がらない世界がある。桑原さんの脚本の素晴らしさを改めて感じた」と語る。

 「一つ目の物語」は31日で終了。前日30日の放送で「宇宙船のパイロット」という大きな夢を明かした舞の娘・歩を中心としたスピンオフドラマを見たい気持ちになった。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2023年3月31日のニュース