沖縄でONE PIECEより売れた漫画「沖ツラ」作者・空さん「沖縄の人が大好きな沖縄を描きたい」

[ 2023年1月1日 10:00 ]

「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」1話の1ページ(C)空えぐみ/新潮社
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 沖縄県内の書店で「ONE PIECE」の最新刊より売れたと話題の漫画が「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(沖ツラ)」だ。作者の空えぐみさんは、沖縄に引かれ、移住して描き続けている。作品に懸ける思いを聞いた。

 「沖ツラ」は、沖縄に転校した主人公の中村君と、同じクラスの喜屋武さん、比嘉さんの女子2人による“方言ラブコメ”。中村君は思いを寄せる喜屋武さんの方言が理解できずに戸惑うが、比嘉さんが“通訳”して助けてくれる。だが比嘉さんは中村君に密かに片思い中という設定だ。

 2020年から新潮社の漫画サイト「くらげバンチ」で連載が始まり、単行本5巻を刊行している。

 空さんは大阪府出身。「沖縄に来て5年。うちなーぐち(沖縄の言葉)はまだ完璧には聞き取れません」と苦笑い。「まだまだ細かい言葉のニュアンスや沖縄で生まれ育った感覚は分からないことが多い」といい、言語や文化の描写は沖縄出身の譜久村帆高(ふくむら・ほたか)さんに監修してもらっている。「沖縄の方が読んでも共感を得られるよう、自分の主観だけにならいように」と心がけている。

 方言だけでなく、沖縄の文化や風土にも焦点を当てている。「ありがたいことに、沖縄県外の方からは“知らなかった”と楽しんでいただき、県民の方からは“あるある”と共感していただいているようです」と手応えを口にする。

 4巻収録の「沖縄のヤモリって鳴くの!?」の回では、沖縄特有の“鳴くヤモリ”を紹介。「県外の方には“沖縄のヤモリって鳴くの!?”と、沖縄県民の方には“えっこれ沖縄だけだったの!?”と、どちらにも驚かれました」と明かす。

 沖縄移住は、関東を拠点に活動していた頃に出会った沖縄出身の友人との会話がきっかけ。沖縄の話を聞き、興味をかき立てられて「2カ月の短期滞在のつもり」で住んでみたところ「思った以上に沖縄で暮らすことが面白く、絶対漫画にしたいと思った」と、本格移住するに至った。

 「沖ツラ」を描く中で感じているのは「沖縄を舞台とする作品は数多くありますが、文化に焦点を当てた作品は実は少なかったのかもしれない」ということ。沖縄といえば、まずは「海が綺麗な観光地というイメージで、それは間違いない」とした上で「観光地から一本筋道に入ると、そこには昔からある沖縄の土着の文化があります」と、観光だけでは気づかない魅力があることを指摘する。

 そんな中でも1番の魅力は人そのもの。「人を隔てる壁がなく、温かい。住んで2日目で家へご飯に呼ばれたのは驚いた」。沖縄の漫画を描きたい思いを伝えると「地域の行事だけでなく、お盆やお墓参り、家族の行事にまで招いていただいてます」と感謝する。

 沖縄のこと教えてくれる人たちが「とても丁寧で、うれしそうに見える」といい、「沖縄の人たちも沖縄が大好きなんだ」と感じている。そして「沖縄の人たちが愛している沖縄を、漫画にして伝えていきたい」というのが今の目標だ。

 沖縄には「ずっと住むつもり」という。「沖縄に拠点を置いて、離島などもたくさん行ってみたい」といい「沖ツラ」の世界もどんどん広がっていきそうだ。

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