備忘録9

[ 2020年8月19日 08:00 ]

<第33期竜王戦>決勝トーナメント3回戦、丸山忠久九段(右)に千日手指し直しの末116手で敗れる藤井聡太棋聖(日本将棋連盟提供)
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 【我満晴朗 こう見えても新人類】

 ☆7月24日 対丸山忠久九段(竜王戦決勝トーナメント3回戦)

 千日手指し直しの末、丸山が115手で勝利。藤井にとっては竜王戦最高成績だった昨期の準々決勝進出に届かずの終戦だった。

 竜王戦と藤井は切っても切れない腐れ縁的な関係にあると思っている。加藤一二三・九段とのデビュー戦(2016年12月24日)歴代最多の29連勝樹立(17年6月26日=対増田康宏四段)に加え、ランキング戦はいまだに黒星なしの20連勝中。棋聖位を獲得し、王位戦も連勝スタートと波に乗りまくっているだけに、竜王戦も7番勝負に進出濃厚では……と安易に見立てていた筆者は実に浅はかだ。名人2期、棋王1期のタイトル獲得歴を誇るベテランの存在感がきらりと光った一局だった。

 ところで藤井の千日手局、これまでいくつあるのだろう。例によってデーターベースを当たってみた。

 (1)17年6月2日=対澤田真吾六段(棋王戦予選)61手
 (2)同8月24日=対豊島将之八段(棋王戦本戦)59手
 (3)18年3月8日=対杉本昌隆七段(王将戦一次予選)59手
 (4)19年5月31日=対菅井竜也七段(竜王戦ランキング戦4組決勝)91手
 (5)同7月8日=対久保利明九段(NHK杯本戦)62手
 (6)20年3月31日=対菅井竜也八段(棋聖戦決勝トーナメント)131手

 …の6局だった。(3)の師弟対決を思い出すファンの皆さんも多いだろう。そして丸山戦が通算7局目(61手)。

 では、指し直し局の勝敗は?

 (1)から時系列に並べると○●○○●○●。なんと4勝3敗、辛くも勝ち越しているという意外な星取りだ。通算勝率8割を軽く超える天才棋士にして、この数字。

 キノコの次に苦手なものは「千日手」かもしれない。

 ☆7月29日 対鈴木大介九段(順位戦B級2組3回戦=東京・将棋会館)

 この順位戦も当初は8月5日の予定を前倒しで実施。王位戦7番勝負第3局(兵庫県神戸市)の第2日と被ったためだ。結果は103手で藤井の快勝。

 2回戦の橋本崇載八段戦(6日)は85手で午後7時50分の終局。鈴木戦は3ケタの手数ながら投了時刻は午後7時25分。チェスクロック計測とはいえ、この時間帯での連続決着はやはり異例だ。

 それにしても間違いなく将棋界に残る濃厚な2カ月間。藤井の出場した棋聖戦、王位戦に加え、名人戦、叡王戦も同時開催なんて今後二度と起きないだろう。スタミナ不足の筆者は後半に入ると思考能力ゼロ。毎回投了寸前の状態でふらふらだった。過密日程にもめげずタフに戦っている棋士の体力がうらやましい。(専門委員)

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