藤井棋聖、17歳白星締め!偉業ずくめの1年 タイトルに勝る「ご褒美はない」

[ 2020年7月19日 05:30 ]

サプライズで誕生日ケーキを贈られ笑顔を見せる藤井棋聖
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 19日に18歳の誕生日を迎える将棋の史上最年少タイトルホルダー・藤井聡太棋聖が18日、17歳最後の対局を勝利で飾った。東京都内で行われた日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)1回戦で菅井竜也八段(28)に103手で勝利。16日に渡辺明2冠(36)から棋聖位を奪取し、タイトル獲得後初戦での白星ともなった。

 藤井の目尻が思い切り下がる。棋聖就位後1勝目を獲得した時代の寵児(ちょうじ)に協賛のJTから制作費万単位の特製ケーキが贈呈された。将棋盤をかたどり、駒はもちろん駒台もレイアウトしている豪華版。思わず“2度見”の藤井は「凄いサプライズ。ここまで凝ったものを頂けるとは思ってもいなかった。感激しています」と笑顔のオンパレードだ。

 将棋の内容も豪華だった。菅井は王位経験もあるれっきとしたA級棋士。生粋の振り飛車党で、居飛車派の藤井にとっては対抗型を強いられる。先手を得たものの、菅井が四間飛車から三間飛車と変幻し、穴熊の姿勢を見せると、対応するように藤井も穴熊へ。「途中までは予想した戦型の一つでした」。自王を左隅に配置した時点では自身3度目の封じ手も敢行。定跡通り銀でハッチを閉め、持久戦へと持ち込む。

 先に手を出すことなく構えていたところで菅井から駒をぶつけられ開戦。だが堅く構えた自陣に隙はない。逆に菅井の堅陣を一枚一枚はがしていく。知らぬうちに形勢は藤井に傾いた。さりげない勝ち方は戴冠者の貫禄だ。

 17歳最後の対局については「意識せず、普段通り」と言う。ただし駒箱を開けて対局開始の準備を始める上位者の義務については「緊張感がありました」と素直な心境も明かした。

 昨年までは持ち時間を使い切っての30秒将棋を苦手としていた。1分設定の朝日杯では3度の出場で2回優勝と得意にしているのに、30秒規定のNHK杯、銀河戦では上位進出の経験がない。JT杯も30秒制で、初出場だった昨年は1回戦負け。「どうも30秒将棋に弱いんです」と告白したのは昨秋のこと。

 それがどうだ。この日は苦手意識を払拭(ふっしょく)するような指し回し。棋聖の肩書を手に入れ、隠し持っていた弱点も同時に消しつつある。

 19日に18歳。何か欲しいものは?の問いかけに「タイトルを獲得できたことがうれしいこと。それ以上のご褒美はないのかな」と話した後「まだまだ課題が多い。その課題をしっかり見つめて強くなれる一年にしたい」と力強く締めた。

 もっと強くなったら、いったいどうなるのか。想像するだけで誰もが楽しくなる。

 《3年連続勝率8割》藤井の17歳の1年は、まさに快進撃だった。昨年9月に第69期大阪王将杯王将戦で2次予選を突破し、挑戦者決定リーグに初参戦。7人が参加する中、広瀬章人竜王(当時)と勝った方が挑戦権獲得という最終局までもつれ込み、惜敗。今年2月には第78期名人戦順位戦C級1組で9勝0敗の無傷でB級2組への昇級を決めた。19年度は史上初となる3年連続勝率8割を達成。第47回将棋大賞では最多勝利賞、勝率1位賞、名局賞特別賞に輝いた。

 6月には棋聖戦で、史上最年少タイトル戦出場。王位戦にも出場しダブルタイトル戦となった。

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