「ひよっこ」シリーズ化熱望 岡田惠和氏版「北の国から」「渡鬼」に?「時々帰れるホームみたいな存在に」

[ 2019年3月25日 05:00 ]

NHK朝ドラ「ひよっこ」や続編「ひよっこ2」への思いを語る岡田惠和氏
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 脚本家の岡田惠和氏(60)が書き下ろし、女優の有村架純(26)がヒロインを務めた2017年前期のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の続編「ひよっこ2」が25日、スタートする。1年半ぶりの復活で、午後7時半からの30分枠で月~木曜の4夜連続放送。岡田氏は名作「北の国から」「渡る世間は鬼ばかり」のようなシリーズ化を熱望し「時々帰れるホームみたいな存在になれば」と明かした。その布石として、第2弾には全キャラクターがほぼ再登場。朝ドラ最終回から当たり前の日常が続いた2年後を描いた。一際愛着を持つ「ひよっこ」への思いを岡田氏に聞いた。

 「ひよっこ」は朝ドラ通算96作目。「イグアナの娘」「最後から二番目の恋」などで知られる岡田氏が「ちゅらさん」(01年前期)「おひさま」(11年前期)に続く朝ドラ3作目となるオリジナル脚本を執筆。東京五輪が開催された1964年(昭39)から始まり、出稼ぎ先の東京で行方不明になった父・実(沢村一樹)を見つけるため茨城から集団就職で上京した“金の卵”谷田部みね子(有村)が、さまざまな出会いを通して自らの殻を破って成長し、小さな幸せを大切に暮らしていく姿を描いた。

 名手・岡田氏が悪人が登場しない心温まる世界を紡ぎ出し、派手さはなくとも、丹念な日常描写と、それぞれにスピンオフ熱望の声が相次ぐ多彩なキャラクターを造形し、視聴者を魅了。近年多かった朝ドラ王道パターンの「ある職業を目指すヒロイン」「偉業を成し遂げる女性の一代記」とは異なり、大きな出来事はなくとも、ヒロインが普通の女の子でも、心に染み入るストーリーが静かな感動を呼んだ。全156回を通じた期間平均視聴率は20・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と大台超えをマークした。

 続編は、みね子とヒデ(磯村勇斗)の結婚から2年後の70年(昭45)秋、2人が働く洋食屋「すずふり亭」がある東京・赤坂と奥茨城村を舞台に、愛すべきキャラたちのその後が描かれる。

 岡田氏は脱稿後の17年8月下旬に行われた合同インタビューの時点で早くも続編に意欲。「特別編」が放送された同年大みそか「紅白歌合戦」のあたりから続編制作の動きが本格的し、撮影は昨年9月と12月に行われた。

 願いが叶い、岡田氏は「続編をやりたがらない人もいると思うんですが、僕は好きなタイプ。続編が決まった時はうれしかったです」と率直に喜び。「やっぱり懐かしさはありました。ヒロイン以外の若手の役者さんはほぼ全員オーディションだったので、『ひよっこ』の後、みんなが(売れて)偉くなって親のような気持ちになりました」と続編の執筆を振り返り、30分枠の月~木曜4夜連続放送も「週1回の4週放送より、朝ドラぽくていい。自分としては、ありがたいスタイルだと思います」と歓迎した。

 「続編やパート2というと、主人公を取り巻く環境が激変していたり、新しいキャラが登場したりするんですが、『ひよっこ』に関しては、無理して変化を起こさず、当たり前の日常が2年間続いた感じで描きたいと思いました。子供の写真が送られてくる年賀状で、だんだん子供が大きくなっていく感じといいますか、そんな近況報告を視聴者の皆さんに届けられればと。それに『ひよっこ』を愛していただいた視聴者の皆さんは、あの変わらなさをもう一度見たいんじゃないかと。みね子とヒデの夫婦の仲が2年で悪くなっているのも嫌じゃないですか(笑)。その期待には応えたかったですし、普通の2年後というのは『ひよっこ』だからこその続編になったと思います」

 当初は「ひよっこ」終盤にみね子とヒデが独立し、荻窪に小さな洋食屋を開くプランもあったが、そこまで物語は進まず。「普通ならパート2で描いてもいいのかもしれないですが、結婚して2年で、あのヒデ君の仕事ぶりからして、独立は全然ない。それで、無理はやめようとなりました」と大きな仕掛けをしなかった理由を補足した。

 ただ、すずふり亭の先輩で、みね子の幼なじみ・三男(泉澤祐希)の兄・角谷太郎(尾上寛之)と結婚した朝倉高子を演じる女優・佐藤仁美(39)の“実際の体形の変化”には、岡田氏は「僕を一番、苦しめました」と苦笑い。佐藤は「ひよっこ」終了から半年後の昨年4月、3カ月で約12キロのダイエットに成功。佐藤が細身になったことは「(「ひよっこ」上)なかったことにはできないので、一応、脚本で言及しております。リンゴ農家に嫁いでいるので、リンゴダイエット的な」と笑いを誘い「そのおかげで、執筆はおもしろかったです。当時、日本人は積極的にカロリーを摂取したい国民だったので、ダイエットという感覚がまだなかったですから」。高子が痩せた理由がどうのように描かれるのか、注目される。

 続編(30分、4回)を通して、ほぼ全キャラクターが再登場。岡田氏は「パート2の一番のテーマは全員が出ること」とし「やっぱり役者さんたちが『やりたい』と思ってくれないと、続編は実現しなくて。『ひよっこ』に関しては、みんなの『出たい』『いつやるの』という空気が僕やプロデューサー、スタッフの背中を一番押してくれました。だから、全員といっても、もちろん限りはあるんですが、一緒に頑張った仲間として、ちゃんとみんなの足跡を紡いでいきたいと思っています」と作品への愛着を明かした。

 そして「変な話、今回のパート2は<僕としては、ずっと『ひよっこ』を続けてみたいんですけど>というメッセージ。自分としては『北の国から』とか『渡鬼(渡る世間は鬼ばかり)』みたいなことがやりたいんだと思うんです」と長寿シリーズの名作ドラマの具体名とともに、シリーズ化構想を披露。「そういうものが書けたら、すごく幸せなんじゃないかと思っています。ただ、それには、さっきも申した通り、役者さんたちみんなが『やりたい』と思ってくれないとダメ」とチームワークを強調した。

 フジテレビ「北の国から」(81~82年に連ドラ、83~02年にスペシャル8本)やTBS「渡る世間は鬼ばかり」(90~11年に連ドラ10シリーズ、12年以降は14年を除きスペシャル)は俳優のドキュメント的な側面もある。

 その意味も込め、有村の魅力を尋ねると「この間の(昨年10月クールに有村が中学生と恋に落ちる教師を演じた)『中学聖日記』(TBS)とかを見ると、有村さんがみね子ということを忘れるんですよね。それが『ひよっこ』になると、やっぱり有村さんはみね子なんです。劇的な役作りをするタイプじゃないのに、作品ごとにそのキャラクターになれるというのはすごい役者さんだと思います。だから、有村さんとはお互いにいろいろな仕事をしながら『ひよっこ』が時々帰ることができるホームみたいな存在になったら、そして、そこで有村さんや若手の役者さんの成長を見ることができたら、うれしいです」と展望した。

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