甲子園に帰ってきた阪神・梅野の「勝つバイ」 31歳での新練習法、深夜まで練習場にこもった苦悩

[ 2023年5月22日 07:00 ]

セ・リーグ   阪神4-1広島 ( 2023年5月21日    甲子園 )

8回2死二、三塁、2点適時打を放った梅野は送球間に二塁を陥れガッツポーズ(撮影・大森 寛明)
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 阪神・梅野隆太郎捕手(31)が21日の広島戦で3打数2安打3打点と活躍し、2連勝に貢献した。4回に、3月31日の開幕戦の第1打席以来となる出場27試合、92打席ぶりの適時打。8回には勝利を決定づける2点打を放った。不振に苦しんだ背番号2が奮起して快勝し、チームの貯金は今季最多の11。節目の40試合終了時点でこの勝ち越し数は、日本一になった1985年と全く同じペースだ。

 梅野がファンに明るい表情、明るい声を届けるのは、開幕戦以来だ。今季2度目のヒーローインタビュー。隣に立つ才木をリードでも引っ張った。4年ぶりに声出し応援が戻り、今季最多の4万2600人が入った甲子園で「梅野コール」を全身に浴びた。

 「本当にやっと帰ってきた。最高の場所で打てて、歓声をいただいて本当にうれしい」。さらに、前日に岩崎が自身の決めぜりふ「明日も勝つバイ」を使ったのを受け「“勝つバイ泥棒”をされたので、今日こそは本物を自分が言いたい。あさっても勝つバイ!」と声を張り上げた。

 京セラドームでの開幕戦以来なのは、お立ち台だけではない。1―0の4回2死一、二塁からの中前打は、3月31日のDeNA戦の第1打席以来、出場27試合92打席ぶりの適時打。2球で追い込まれた後のスライダーをコンパクトにはじき返し、リードを広げた。

 復活劇はこれで終わらない。8回2死二、三塁。直前で森下が倒れ、「森下が悔しそうなあれ(様子)だった。何とか自分が、と」と気合が違った。島内の初球155キロを右前2点打。1点差に詰められた後に突き放した喜びは、1本目より大きかった。

 「追い付かれそうで追い付かれずに、最後に離した。きつい展開だった。2本目が非常にうれしかった」

 ここまで苦しい時間を過ごしてきた。一時は打率・094にまで低迷。好機での凡打が続き、取材対応のいい親分肌タイプが、報道陣の前を無言で去る日々が続いた。だが、言葉がなくても、打球音は消えなかった。ナイター後、深夜の室内練習場で打ち込んだ。右手一本でのティー打撃など、31歳にして、これまでやったことがない練習方法も試した。

 「新しいことをトライしながら、感覚を取り戻そうと思って」
 光を求め、もがいた。その苦悩を「どうのこうのはない」と明かすことはない。しかし、この日で少し抜け出せたのは事実。打撃の助言をたびたび送った岡田監督は「これからどんどん上がってくるやろな」と期待を寄せ、自身も「これから上がるしかない。いいきっかけができたかなと思う」と力を込めた。

 日本一になった85年と同じく、節目の40試合で今季最多貯金11に到達。だが、その記録よりも、梅野がよみがえる転機になった試合だったと、1年が終わった時に記憶されるかもしれない。 (倉世古 洋平)

【データ】
 ○…梅野(神)が4回に中前適時打。打点は5月14日DeNA戦7回の犠飛以来3試合ぶりだが、「打点付きの安打」は開幕戦の3月31日DeNA戦の2回に適時打を放って以来、今季2本目。出場26試合のブランクは、16年3月30日から9月22日の32試合、21年9月5日から閉幕までの28試合に次ぐ3番目の長さになった。8回には2点適時打でゲーム3打点。今季初の複数打点で、3打点は21年5月30日の西武戦3打点以来2年ぶり。自己最多は過去3度ある4打点。

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