【内田雅也の追球】「雨水」の頃の併殺崩れ 岡田監督の1死、1球を突き詰める姿勢

[ 2023年2月19日 08:00 ]

練習試合   阪神2-2DeNA ( 2023年2月18日    沖縄・宜野座 )

9回、送球が乱れ、森(左)が一塁セーフとなり併殺を奪えず
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 まだ2月の半ばで、練習試合である。勝敗など関係ない。満員の宜野座村野球場には試合前、「得点に関係なく9回裏を行います」と場内アナウンスが流れていた。

 だから、今から書くことは時期が1カ月ほど早い。それでも、あえて書いておこうと思う。

 試合は阪神が2―0リードで9回表を迎えた。この回から登板の岡留英貴は制球が乱れ、死球、四球で無死一、二塁。予備の投手としてブルペンにいた左腕・岩田将貴を投入した。打者は左の俊足、森敬斗だった。

 初球。岩田得意のシュートで詰まらせ、一塁ゴロが転がった。一塁手・板山祐太郎から二塁の遊撃手・小幡竜平、さらに一塁カバーの岩田へ、3―6―1と転送された。

 小幡の送球は本塁寄りに乱れ、一塁はセーフとなった。森は俊足だが、内角球を振り切ってのスタートで、一塁駆け抜けタイムは手もとの測定で4秒34かかっていた。

 送球は左利きの岩田がバックハンドのような体勢で捕球できる範囲で、大きく乱れてはいない。それでもストライクの好送球であれば、タイミングとしてはアウト、併殺が成立していた。

 結果は一塁セーフで1死一、三塁が残った。岩田は次打者を三振に切り2死。さらに蝦名達夫を1ボール2ストライクと追い込みながら、右中間二塁打を浴び、2者生還となった。本番であれば、「あと1球」から同点とされたことになる。

 併殺崩れで残した走者が失点にからむ――は突き詰めたい課題だ。強肩に定評のある小幡としても痛恨だったろう。何しろ、小幡はこの試合で前のボテボテ、二塁ベース寄りと難ゴロを2つ、好守でアウトにしていた。

 監督・岡田彰布に聞いてみた。「うーん。タイミングがアウトかどうかはオレには分からん。ただ、あの時、板山が(一塁に)入られへんかということは言うたよ」

 小幡の送球ではなく、一塁上で捕球するのが走りながらの投手でなく、戻って正対できる一塁手(つまり3―6―3)ではなかったか、というわけだ。1死、1球を突き詰める姿勢を感じる。

 朝、歩いた村ではサトウキビの刈り入れが行われ、ウグイスが鳴いていた。季節は二十四節気の「雨水」を迎える。空から降るものが雪から雨に変わり、草木が芽生える頃という意味だ。教訓を胸に、さあ、これからである。 =敬称略=
 (編集委員)

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