【スポニチスカウト部(30)】浦和麗明・吉川悠斗 ダイヤの原石 20K秀才左腕

[ 2022年9月13日 06:10 ]

最速142キロの直球とスライダーを武器にする吉川(撮影・柳内 遼平)
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第30回は浦和麗明(埼玉)の最速142キロ左腕・吉川悠斗投手(17)。女子校から18年に男女共学となった同校に入学し、国公立大志望者が属する特選コースで勉強にも励む秀才投手がプロ入りに挑む。

 男女共学化から5年目。浦和麗明に初のプロ野球選手誕生が迫っている。1メートル85の大型左腕・吉川は将来性を高く評価され、全12球団のスカウトが視察に訪れている。本人は「育成でもプロに行きたい」と謙虚に言うが、今年のドラフト戦線は左腕不足のため、支配下指名の可能性もある。

 小さなテイクバックから、長い腕を鋭く振って繰り出す直球は球速以上の威力で、スライダーは鋭く変化する。今夏の埼玉大会2回戦の秩父農工科戦では、9連続三振を含む1試合20奪三振をマーク。視察したスカウトに強烈な印象を刻んだ。9連続奪三振の快投を「投げていて楽しかった。もうちょっといけるかなと思っていた」と涼しい顔で振り返った。

 サイド気味のフォームだった中学時代は、最速115キロ程度で5番手投手だった。同校には「偏差値の高い大学を狙えると思った」と勉強に重きを置いて進学。1メートル80、60キロの体格は、インターネットで自分に合ったプロテインを取り寄せるなど、食事トレーニングで1メートル85、80キロまで成長した。スリークオーターへのフォーム変更も成功。最速は左腕としてプロを狙える142キロまで上昇した。

 勉学に優れるため、受験勉強による大学進学も可能だが「いろいろな人が野球をやっている中で本当に一握りしかプロになれない。大学に行ってもケガをしてしまうこともある」と目の前のチャンスを見据える。夏の大会後も新チームの練習に参加し、打撃投手を務めるなど熱心に練習を続ける。

 「指名されると思っていた人が漏れてプロに入れないという話もよく聞く。確実でもないし、なんなら(指名の可能性は)低いと思う。ドラフトまでしっかり練習して投げられる準備をしたいと思います」。ダイヤの原石は己を見失うことなく、10月20日のドラフト会議を待つ。(柳内 遼平)

 《初めての喝で一変、プロ注目の存在に》佐藤隼人監督は、吉川の成長について「考える力によるものだと思います。勉強もしっかりやらないといけない環境の中で、積み上げができる子。考えてピッチングができるようになってきた」と語った。転機は3回戦で敗退した昨夏。慕っていた先輩たちが引退し、新チームになっても意気消沈していた吉川を指揮官は初めて一喝。奮起した吉川は、先輩たちへの思いを胸に挑んだ秋季大会でベスト8に導き、プロ注目の存在に。「“プロ野球選手になれるかもしれない”と初めて実感したと思う。その時からまた一気に成長してきました」と指揮官。成長はまだまだ止まらない。

 ☆球歴 幼稚園年中から吉川グリーンズで野球を始める。吉川市立中央中では吉川美南ボーイズに所属。

 ☆身体能力 50メートル走6秒4。遠投100メートル。

 ☆球種 直球、スライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップ、フォーク。

 ☆憧れの選手 楽天・岸。

 ☆最大の武器 右打者の内角を突く直球。「角度がついているので、ストライクでも打者が避けることが結構あった」と自信を持つ。

 ☆ライバル 浦和学院の左腕・宮城誇南。「タイプは違うけど、自分で勝手にライバルと思っています」

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