阪神・岩崎が長打を打たれない理由 虎ファンが待ち望む“塩コメント”を支える凄みに名物記者が迫る

[ 2021年5月21日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神ーヤクルト(雨天中止) ( 2021年5月20日    甲子園 )

今季も抜群の安定感を見せている岩崎(撮影・平嶋 理子)
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 リーグ首位を快走する阪神で、進撃の原動力となっているのが、8回を託される岩崎優投手(29)の奮闘だ。登板後の定番コメント「0点に抑えることができてよかったです。」もグッズ化されるほど話題になっているが、快投の裏には今季のNPBで唯一体現している驚異の数字が存在する。新人時代から取材を続けるスポニチ本紙記者が、好調の要因を分析した。

 今、虎党が待ち望んでやまない“勝利の合言葉”が存在する。

 「0点で抑えることができてよかったです。」――。

 セットアッパーの岩崎は仕事を果たした後、必ずこのコメントを球団広報に託す。抑揚のない“塩分濃度”高めの一文は、寡黙なキャラと相まって次第にファンの間でも話題に。ついに、18日からは「0点で―」フェースタオルの発売も開始された。背番号13がブームを呼んでいるのも、リーグ首位を快走するチームへの貢献度の高さに他ならない。

 チームトップの22試合に登板し、防御率1・33、17ホールドポイントは堂々のリーグ1位。僅差の展開で良質なパフォーマンスを安定して発揮していることが見て取れる。その裏付けとも言える驚異の数字が、12球団のリリーフ投手(15試合以上登板)で唯一の「被長打ゼロ」。被安打14はすべて単打だ。

 終盤のマウンドで一発はもちろん、長打は命取りとあって、バッテリーとして警戒を強めることは大前提。その上で、今年の岩崎は1イニング、ひいては3つのアウトをいかに奪うかに注力しているように感じる。時には四球も、アウトを奪うための一つの手段と捉えている。

 4月30日の広島戦を例に挙げたい。4点リードで迎えた8回、先発の秋山が1点を奪われ、なおも1死二、三塁とされたところで登板。会沢の右犠飛で4―2とされ、2死三塁で鈴木誠を迎えた。3ボール1ストライクから四球を与えたが、外角高めに投じた初球以降はすべて低めを丁寧についていた。結局、続く西川を遊ゴロに仕留め、2点リードで守護神・スアレスにつなぎ勝利を引き寄せた。

 長打を浴びる痛手を考慮するなら、カウントによっては四球もやむなし。ここまで献上している8個の四球も、本人にとって無駄なものはないのだろう。失敗の許されない投手のリスクマネジメントは藤川、能見と、その背中を見てきた先輩から学んだものなのかもしれない。

 今年1月、故郷・静岡での自主トレを取材した際には「昨年は2本なんで、1本でも減らしたいし、0のまま終わることが理想」と被弾ゼロの崇高な目標を設定した。現状、二塁打すら許さず、さらなる高みで腕を振る。今春キャンプ中には「8回の男」としての矜持(きょうじ)も口にしていた。

 「リードしたままスアレスにつなぐ。それができなければ同点で。それが自分の仕事です」。多くを語らずとも、シンプルな言葉にはいつも「本質」が潜む。あのコメントも例外ではない。「0点に抑えること」を使命とする左腕は、きょうもその一心で仕事場へ向かう。(遠藤 礼)

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